IBM DB2の新バージョンがさりげなく登場
先週は、Oracle OpenWorldのおかげで、毎日早起きして六本木に通い、なんだか身も心も赤色に染めあげられてしまった感じ。まだ、その赤色は抜けないくらいたくさんの宿題を抱えているのだけれど、そんな中さりげなく、IBMがDB2の最新版バージョン10.1を発表した。発表のリリース文の中でキーワードとなっていたのが、「ビッグデータ」。DB2、おまえもかという感じがしないでもない。
新機能としては、従来はデータベース表の行や列ごとでしか制御できなかったアクセス制御が、行と列の両方でも行える「Row and Column Access Control」、さらには従来製品よりも効率を上げたデータ圧縮機能「アダプティブ圧縮」などが追加されている。このアダプティブ圧縮では、従来製品がページごとの圧縮だったのに対し、ページで圧縮したあとにさらにテーブル単位で圧縮できるようになっている。これにより、IBMが検証したケースでは、従来が圧縮率40%だったデータが、アダプティブ圧縮では16%へと大幅に圧縮率の向上が図られたとのこと。圧縮はOracleにもSQL Serverにも搭載されている機能であり、いまや商用データベースでは当たり前のものになりつつある。利用したことがない人は、是非その効果を試してみてはいかがだろうか。
さらにちょっと面白い機能が「タイム・トラベル参照」。現在のデータだけでなく、過去に入力したデータおよび更新履歴の参照と、今後変化するデータの入力ができるというもの。BIやBAにおけるシミュレーションや予測分析で活用できそうだ。DB2 10に関するさらに詳しい情報は、IBMのWebサイトに特設ページ「ビッグデータ時代を先駆する進化したデータベース」がオープンしているので、興味がある方はそちらを参照してもらえばと。最後に、DB2 10のバージョンが、最初からなぜ10.1なのかというのは、ちょっと気になるところ。今後取材をする機会があると思うので、その際にこのことについて質問してみたいと思うのだった。
IBMもソフトウェアとハードウェアを融合した新たなプラットフォームを提供
もう1つ、IBMの大きな話題が。こちらはハードウェアの新顔で、まさにOracle Exaファミリー対抗だ。エキスパート・インテグレーテッド・システムと説明されており、日本語で言うならばIBMの専門エンジニアがあらかじめ構成、設定したシステムといった感じか。名前は「IBM PureSystems」。最近のIBMは、「Pure」という名前がお好きなようだ。まずは5月にサーバー、ストレージ、ネットワーク、仮想化、管理機能を統合化したインフラストラクチャー・システム「IBM PureFlex System」を、さらにこれにミドルウェアを加えたプラットフォーム・システム「IBM PureApplication System」を8月から出荷を開始する。
コンセプトは、基本的にはOracleのEngineered Systemsとほぼ同じだと言える。ベンダーがハードウェアとソフトウェアを密に融合させ、提供することで新たな価値をユーザーに提供するというもの。あらかじめ、専門家により最適に構成、セットアップされた状態でユーザーに届けられるので、自分たちでインテグレーションする必要なしに最高のパフォーマンスが得られることに。
リリース文を読んだ限りでは、IBMのPure Systemsは用途が固定化されているExaシリーズよりも汎用性が高いマシンのようだ。なので、よりコンセプト的に似ているのは、OracleのEngineered Systemsの中でもSPARCベースのOracle SuperClusterになるのかもしれない。ちなみにPureFlex Systemは、サーバーの部分はインテルのx86シリーズに加えIBMのPOWER7を選択できる。そして、オペレーティングシステムとしてはAIX、IBM i(旧AS/400)、Linux、Windowsに対応し、さらに仮想化ハイパーバイザーもVMware、KVM、Hyper-V、PowerVMとバラエティに富んでいる。搭載できるのが自社製ソフトウェアだけではないあたりも、Oracleよりオープンというか汎用性の高い仕上がりになっている。
先日のOracle OpenWorldの基調講演で、OracleのCEO ラリー・エリソン氏は、Oracle ExadataでIBMの一番速いマシンに勝つことが1つのターゲットだったと言っていた。このIBM PureSystemsの登場で両社製品の優劣は、さてさてどのように変化することになるのだろうか。おいおい、さまざまな評価の声やベンチマーク結果なども発表されることになるだろう。そういった性能面の尺度だけがシステムを選ぶポイントではないけれど、やはり「どちらが速いのか」というのはちょっと気になるところだ。