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新規事業計画に役立つ「経営分析・管理会計」の考え方・活かし方

新規事業の計数計画には、「財務分析」の手法が役に立つ

(第4回) 


前回は、経営戦略の違いを見るための手段として、「収益性分析」が役に立つことを説明しました。計数計画を立案した場合に、チェックすべき1つの視点であるということです。今回は、収益性分析を含む財務分析の体系を紹介し、財務分析を新規事業開発とどうつなげていくのかを説明します。一般的に財務分析は、過去データ分析なので、新規事業開発を行なう人は、あまり役に立たないと考えがちですが、そうではありません。今回はこの点を、認識いただきたいと思います。(今までの連載はこちら)。

「財務分析体系」と「分析の概要」

 財務分析の体系は、図1、図2、図3の通りです。収益性、安全性、生産性、成長性の4つに分類して考えるのが一般的で、これらの分析の切り口は、密接に関連していることを理解しましょう。

1.収益性分析

                      図1.財務分析の体系1                        

 まず収益性分析です。収益性分析とは、投資が利益をどのくらい効率よく稼ぎ出しているかを判断することです。収益性の代表的な指標は、ROA(Return On Assets)です。利益÷事業に投資した資金(資産)×100(%)で計算されます。ROAは、第3回で取り上げたROIと同じ概念です。投資の収益性はROIですが、貸借対照表の資産に注目した指標がROAです。

 ROAは、売上高利益率(売上高営業利益率が使われることが多い)と資産回転率(売上高÷資産)の積です。過去データ分析では、達成されたROAは、売上高利益率が貢献しているのか、資産回転率が貢献しているのかを判断します。言い換えれば、高付加価値戦略として成功したのかを判断するなら、売上高利益率がアップしている必要があります。規模の拡大でシェアをとりに行ったなら、売上高利益率が下がっていても、資産回転率がアップして、ROAが計画値を上回っている必要があります。

 なお、損益分岐点分析は、売上高、変動費、固定費の関係から、売上高利益率の変化とその内容(質)を分析することで、私は、収益性分析に含めて分類しています。新規事業計画には不可欠な知識ですので、連載の中ごろに詳しく取り上げる予定です。

2.安全性分析

図2.財務分析の体系2                        

 安全性分析は、借金の支払い能力を見ることが目的です。支払いが出来ないと最終的に倒産してしまいます。そうなると仕入先からの信用が失われるので、信用分析とも呼ばれます。安全性分析には、貸借対照表を使って分析する方法とキャッシュフローで分析する方法があります。

3. 生産性分析

 生産性分析は、人や設備などの経営資源の活躍度、貢献度を分析することです。一人あたり売上高、一人あたり付加価値(労働生産性)、坪当たり売上高(売り場生産性)など、単位あたりの貢献度を分析します。その狙いは、売上高利益率や資産回転率が良くなったり、悪くなったりする真の原因を探ることです。言い換えれば、収益性分析をさらに補完し、深く分析するために必要です。

図3.財務分析の体系3                        

4. 成長性分析

 成長性分析は、期間比較して、売上高や利益、資産の伸び率を分析して、企業成長の良否を判断します。増収増益、減収増益、増収減益、減収減益などの利益成長が分析の中心でしたが、在庫や売上債権の増加から営業キャッシュフローの問題点を指摘したり、付加価値の増加から、適正人件費を検討したりする領域が重要になっています。

次のページ
財務分析は、新規事業計画において活用できる-目標ROA、投資額 目標利益の決定

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この記事の著者

千賀 秀信(センガ ヒデノブ)

公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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