「女性限定なら参加したい」と潜在ニーズを取り込み拡大
──CTF for GIRLSは設立10周年を迎えたそうですね。
中島明日香:自分でもいまだに信じられません(笑)。CTF for GIRLSは、2014年、情報セキュリティ技術を学びたい・興味がある女性のためのコミュニティとして立ち上げました。以来、女性限定のCTFワークショップとCTF大会、合わせて30回ほど開催しています。特に人気なのはCTFワークショップ。多いときには100人以上の女性が参加しています。
参加者の背景は様々です。セキュリティエンジニアの方はもちろん、普段はWebエンジニア、インフラエンジニア、ソフトウェア開発者として従事していて、セキュリティも知っておきたいという方もいます。セキュリティ関連の営業やコンサルタントをしていて、お客さまと相対するために技術的知見を深めたいという方もいますね。純粋にCTFに興味があるとか、エンジニアを目指す学生の方もいます。
──設立当初は、女性の情報セキュリティ従事者が少なく、運営の面でも苦労があったと聞きました。
中島明日香:当時は、女性のCTF経験者はもとより、情報セキュリティの領域で私の見える範囲では活動的な女性は少なく、企画立ち上げ当初、誰に声を掛けたらいいか分からなかったです。 その上、私自身も社会人になったばかりで、イベント運営経験もゼロでした。今思えば、本当に情熱と勢いだけでやっていました。失敗も挙げたら切りがありません。
でも、多くの方の助けがあって、2014年6月に第1回ワークショップを開催することができました。私も運営のメンバーも、「女性限定だし、20人くらい集まってくれたら大成功」と思っていたんです。ところが蓋開けてみれば、80人近く参加してくださって、驚くとともに、すごく嬉しかったですね。
──なぜ、そこまで多くの女性が集まったと思いますか?
中島明日香:それまで見えていなかっただけで、「一般的なセキュリティの勉強会は男性ばかりで入りづらいけど、女性限定なら参加してみようかな」という方が、潜在的にかなりいらっしゃったんじゃないかと思います。
中島春香:当時は、情報セキュリティの勉強会といえば参加者の9割以上が男性。女性の参加者が自分一人だけということも少なくありませんでした。私も、参加者50人中女性は2人だけという勉強会を経験したことがあります。勉強会の講義や演習自体は個人作業ですが、最後の交流会や情報交換会となると、お互い気を遣って話しかけづらい空気感を感じてコミュニティに入っていくのに苦戦したことを覚えています。
そのような経験を踏まえて、まずはじめのステップとして情報セキュリティ技術や業界に関心を持って入ってきてもらうには、女性限定など、バックグラウンドが近しい人たちが集まって、気兼ねなく会話や相談がしやすい環境があることが大事だと実感しました。CTF for GIRLSは、女性が「セキュリティの勉強会に初めて参加したい」「情報セキュリティの話をしたい」と感じたときに、気軽に参加しやすい価値のあるコミュニティだと考えています。
コミュニティを10年継続できた秘訣
──10年継続できた要因は、何だと思いますか?
中島明日香:持続可能な運営体制づくりに力を入れてきました。途中からは、春香さんに副代表としてワークショップを主導してもらい、私は全体の運営というふうに役割分担しました。また、誰かが休んだり抜けたりしてもワークショップを開催できるように、ノウハウや資料を共有してきました。
──水野さんは、学生時代からCTF for GIRLSに参加されているそうですね。
水野沙理衣:はい。大学3年生で情報セキュリティに興味を持ち、一人でCTFに関する勉強を始めました。当時はコロナ禍で、オフラインのイベントはほとんど開催されていませんでした。同じく勉強している人にコンタクトを取ってみようかなとSNSで探してみたこともあったのですが、どのような方か分からない警戒心から、声をかける勇気がなかなか出ませんでした。そんなとき、CTF for GIRLSを知りました。これなら参加できると思って初めて飛び込んだのが、CTF for GIRLSのオンライン講義。参加者が女性だと分かっているだけで安心感があり、相談がしやすいなと感じました。
──他にも、CTF for GIRLSを継続する上で心がけてきたことはありますか?
中島明日香:意識してコミュニティを拡大してきたことでしょうか。第1回、第2回ワークショップは、東京近郊の20~30代の女性が多く、地方の方や学生、お子さんを持つ女性の参加者が少なかったのです。そこでコロナ禍前の話ですが、学生限定のワークショップを開いたり、地方の方や育児で忙しい方も参加しやすいようにオンラインとオフラインのハイブリッド開催にしたりと工夫してきました。また、「お子さんと一緒に参加OK」とも呼びかけたこともあります。