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JFEスチール幹部が語る、大規模DX投資の現在地:データ活用と既存システムの調和が生む鉄鋼業界の競争力とは?

JFEスチール 新田哲氏インタビュー

 経済産業省が東京証券取引所やIPAと共同で、DXに取り組む企業を選定する「DX銘柄」制度。JFEホールディングスは、2015年から始まった前身の「攻めのIT投資銘柄」時代から、何度もその取り組みの先進性に注目を集めてきた。直近でも「DX注目企業2023」に選定されている。その中核企業であるJFEスチールは、2021年度からの4カ年で1,150億円をDXに投資し、成長と競争力強化に向けた取り組みを進めている。その詳細を幹部に聞いた。

基幹システムを「概念データモデル」で再構築

JFEスチール株式会社 専務執行役員 IT改革推進部・データサイエンスプロジェクト部  担当 新田哲氏
JFEスチール株式会社 専務執行役員 IT改革推進部・データサイエンスプロジェクト部 担当 新田哲氏

 JFEスチールの事業遂行におけるDXの重要性は非常に高い。現在は、第7次中期経営計画(2021年度〜2024年度の4ヵ年)の達成を目指し、「積極的データ活用により、競争優位を獲得」という全社方針で、変革を進めている。同社の競争優位の源泉は、これまでの長い事業活動で蓄積してきたデータ資産にある。そこで、「1.IT構造改革の断行」「2.データ活用レベルの高度化」「3.ITリスク管理強化」をDX戦略の柱に据え、攻めと守りの施策を同時並行で進めている。

図1:JFEスチールにおけるDX戦略の全体像 出典:JFEスチール
図1:JFEスチールにおけるDX戦略の全体像 出典:JFEスチール「JFEグループDX戦略説明会」資料 P.10より [画像クリックで拡大]

 JFEスチールのコンピューター利用の歴史は長い。一般に、製鉄の工程は大きく「高炉での銑鉄の生産」「転炉での不純物の除去」「圧延やめっき加工などの下加工」に分かれる。鉄鋼メーカーの中でも、JFEスチールは、基幹設備となる高炉を複数基所有し、鉄鉱石から銑鉄を生産し、最終製品として出荷するまでを一貫して行う高炉メーカーになる。一連の生産プロセスを効率的に制御するため、同社では1960年代からメインフレームコンピューターを使ってきた。一部では今もなお、COBOLやアセンブラのソースコードが現役で動いており、プログラムステップ数に換算すると、製鉄所すべてを合わせて2億ステップを超える規模だ。この他、制御系のプログラム資産を含めると、全社のプログラム資産は膨大なものになる。

 新田氏は、「鉄鋼業の場合、トランザクション数はさほど多くないが、トランザクションの中の項目数が非常に多い特徴がある」と説明する。というのも、鉄鋼業のビジネスは、基本的に一品一様の受注生産だからだ。注文書を例に取ると、トランザクションレコードの中には、注文番号から、需要家名称/コード、規格名称/コード、サイズ、数量、価格、持ち込み先のような一般的な項目に加え、“レシピ”と呼ばれる化学成分等の製品仕様が含まれる。その情報は商品品目によって変わり、3,000〜6,000項目にもなる。しかも、それが顧客の注文内容に応じて変わる。顧客から注文を受ける都度、新しいレシピを付与し、工場に指示を送ることになるため、他の業種業態と比べて1つのトランザクションにおける項目が多くなるのだ。

 このトランザクションの特徴を考慮し、JFEスチールでは2003年にデータ視点で基幹システムのあるべき姿を定義する「概念データモデル」の手法を採用し、再構築を実施した。2007年から運用している「J-Smile(JFE Strategic modernization & innovation leading system)」がその基幹システムに該当する。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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