SAPジャパンは4月23日、SAP Business AIの最新情報についてプレスセミナーを開催した。
まず、同社ビジネステクノロジープラットフォーム事業部 事業部長の岩渕聖氏が、2023年11月に開催した同セミナー以降のアップデートを話した。SAP Business AIの全体像は大きく4層で構成されている。同社が開発した自然言語生成型AIの「Joule(ジュール)」を筆頭に、各アプリケーションに組み込まれたAI機能、カスタム可能なAIファンデーション、そして3月に協業を発表したエヌビディアを含む9社連携パートナーだ。
岩淵氏はエヌビディアとの提携について、「1つは、RAGのようなハルシネーションを防ぎ、生成AIの精度を上げるモデルを一緒に作っていくこと。もう1つは、SAP S/4HANA Cloud、SAP SuccessFactors、SAP Signavioに組み込む最適なシナリオを作っていきたい。3つ目は処理の高速化。機械学習、AI含めて非常に多くのコンピュータリソースが必要となる。最後に、既にリリース済みのLLMモデルをチューニングしていく形で誤差をなくしていく」と話した。
続けて岩淵氏は前回からのアップデートとして、2024年4月現在でSAP Business AIのシナリオが80を超えていると強調。2023年第4四半期以降、Jouleを皮切りに14の新サービスをリリースしたという。Jouleについては、各種アプリケーションの中で使えるようになってきているとした。具体的に、SAP SuccessFactors、SAP Start、SAP Build Code、アーリーアダプタを対象にSAP S/4HANA Cloud Public Editionでも使えるとのことだ。岩淵氏は「この半年でここまで広げてきた。今後も対応するアプリケーションが増えてくる」と話す。さらに、SAP Analytics Cloud Just Ask、SAP HANA Cloud Vector Engine、SAP Build Codeといった技術基盤領域でもJouleを提供開始しているという。
Jouleの特長として、岩淵氏は「SAPにしかない業務のコンテキストやデータ、システムの中身の情報がある。これらをJouleに連携することで、業務処理やエラーチェックにも発展して利用できる」と話す。4月以降も、Jouleをアプリケーションに組み込む予定が目白押しだ。最後に岩淵氏は「年内でも49以上のリリースを予定している。今後、機能が拡大していくロードマップがでているので、ITの開発現場やデータ活用の現場自体も大きく変わってくると想定している」とした。
次に、同社カスタマーアドバイザリ統括本部 SAP Business AI Lead 本名進氏が登壇し、Jouleの特長を補足した。「何といっても強みはSAPの操作感をガラッと変えるものになる。そもそもマウスクリックするものではなく、自然言語で問い合わせて、指示をどんどんしていくもの。まさにユーザーアシスタントだ」と強調。岩淵氏はデモ操作で、Jouleがレポートのサマリーや次のアクション提案ができることを説明した。
今後の国内での展開戦略として、既存のパートナー向けの支援や既存顧客に向けた支援と具体的なユースケースの提示を挙げる。本名氏は「AIの領域は新しいものだが、すぐにAI-readyなパートナーが日本でも立ち上がる見込みだ」と話す。加えて、イノベーションを創出する施設として「SAP AppHaus」をグローバルに展開しているが、国内初拠点としてザイナスが4月10日に大分県に「Zynas AppHaus Oita」を開設したことを挙げた。デザインシンキングなどを通してAI活用のユースケースを見出したり、アセット化したりしていくことを展開予定だという。
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