SAPジャパンは2月15日、2024年のビジネス戦略を発表した。
同社 代表取締役社長 鈴木洋史氏は説明会の冒頭、2023年度のグローバル実績について説明。総売上は前年比9%増を上回り、最も注力したクラウドの売上は23%増という結果になったとしている。なかでも「SAP S/4HANA」の売上が73%増と、クラウドの売上をけん引したと振り返った。
続いて、2024年のビジネス戦略において、「すべてのSAPポートフォリオにおけるAIの導入」「パートナーエコシステムの拡大」「社会課題の解決とサステナビリティ」の3つが柱になると説明。「2024年を『ビジネスAI元年』と位置づけ、すべてのSAPクラウドソリューションにAIを組み込んでいく」と鈴木氏は言及する。
ビジネスAIは、SAPが提供するビジネスで利用できるAI機能の総称。このアプローチ体系は4層にわかれており、一番下に「AIエコシステムパートナーシップと投資」を位置づけていると下図を提示。これを基盤として、各種ソリューションを統合するプラットフォーム「Business Technology Platform(BTP)」を通じてクラウドアプリケーションにAIを組み込み、ビジネスプロセスの効率化を推進していくという。4層の一番上にはAI Co-pilot(コパイロット)「Joule」を位置づけ、「各クラウドソリューションに直接Jouleを組み込むことで、自然言語で適切な回答を引き出すことを可能にする」と鈴木氏は説明した。
なお、Jouleは2023年11月よりSAP SuccessFactorsで利用可能となっており、2024年の1~3月にかけてSAP S/4HANA Cloud Public EditionやBTPで提供する予定だとした。
また、昨年に引き続き注力していくのが、大企業向けにオンプレミスからクラウドERPへの移行などを支援する「RISE with SAP」と、中堅・中小企業向けにクラウドERPの新規導入を支援する「GROW with SAP」の2つだと鈴木氏。2024年度もパートナー企業との連携を強化しながら、Fit to standardを推進していくとのことだ。
「パートナーエコシステムの拡大」について、2023年は42社が新規参画し、パートナー数は500社を超えているという。2024年は「新規パートナーの拡大・強化」「パートナー自走ビジネスの実現」「導入成功への支援と伴走型協業」「パートナーソリューションの拡販支援」の4つを推進していくとのことだ。
「社会課題の解決とサステナビリティ」にも引き続き注力していくとした。取り組みの例として、能登半島地震での避難所情報を集約・可視化するアプリケーションの開発および提供や、官民協業で実施している蓄電池のトレーサビリティ管理システムとの接続検証などを挙げた。鈴木氏は「こうした取り組みを踏まえて、2024年も企業のサステナブルな経営を支援していく」と意気込んだ。
最後に鈴木氏は、SAPが掲げる「グローバルでナンバー1のエンタープライズアプリケーションとビジネスAIカンパニーになる」という目標に対し、SAPジャパンが貢献すべく策定した「中期変革プログラム」(2024年~2026年)にも触れた。200名を超える社員が主体となり、「顧客、社員、社会の成功をサポートする3つのサクセス活動と、SAPジャパンの成長に向けたグロース活動の両輪で、一体となって推進していく」とし、説明を締めくくった。
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