ヴォーガス博士(AWS)やパット・ゲルシンガー(VMware)、ジェフリー・ディーン(Google)などビッグベンダのエグゼクティブが数多く登場した初日とはやや雰囲気が異なり、2日目はクラウドをメインインフラとするBtoC事業者のアプローチや、ベンチャーが開発するクラウドサービスについてのセッションが目立ったのが印象的でした。ここに出てくる企業は日本ではなじみのない名前が多いですが、スタートアップ/エンタープライズともに日本の数歩先を行く米国のクラウド事情が現場感覚で伝わってくる非常に貴重な機会でした。

右の赤いパーカーの若者は、クラウド(AWS)ベースでビッグデータサービスを提供するシリコンバレーのベンチャー
ScalrのCEO セバスチャン・スタディル(Sebastian Stadil)氏。
なぜ彼がモデレータを務めたかというと、
2013年前半、GigaOMで最も反響があり、議論を巻き起こした(=炎上した)記事を寄稿したから。
記事の内容はAmazon EC2とその対抗馬Google Compute Engineのベンチマークについて書かれている。
この内容を受けて「クラウドベンチマーキング」というタイトルで、
AWSを利用してコンシューマにサービスを提供する大小2つの企業
- Netflixのクラウドソリューション担当ディレクター アリエル・ツェイトリン(Ariel Tseitlin: 中)氏と、
BranchOutのテクニカルオペレーションディレクター ジェレミー・コーバー(Jeremy Koerber)氏が、
それぞれ自社における運用について語った。
Chaos MonkeyやAsgardなどいくつものAWS用オープンソースツールを開発していることで知られるNetflixだが、
同社にとってクラウドインフラにかかるコストはそれほど大きなものではない。
「正直、我々はかなり高い"パイオニア税"を払っていると思うよ。
でもAWSに相当するケイパビリティをもったクラウドベンダはないんだ」とツェイトリン氏。
一方でBranchOutのような小さな企業にとってはAWSのコストは決して安いものではない。
「RDSやDynamoなんてとても使えない。
EC2の上でオープンソースを使いながらせっせとシステムを構築しているよ」(コーバー氏)とけっこう泣ける話も。
「別にAWSにロックインされているわけじゃないが、AWSよりいいものがなかなかない。
GCEには期待しているけど、まだ成熟しているとは言いがたいかな…」とコーバー氏。
なんだかんだ言ってもやっぱりAWSが一番という結論でした▼

サム・スキラッチェ(Sam Schillace: 左)氏はGoogle Docsの最初の開発メンバーとしても知られる。
現在、PHP、MySQL、そしてAWSの各種サービスを使っているというBoxだが、
近い将来にもオープンクラウドアーキテクチャのOpenStack Swiftをベースとしたシステムにシフトする予定とのこと。
ただしAWSから完全に離れるようなことはなく、たとえば長期間のアーカイブに適したAmazon Glacierなどは
バックアップ用に利用し続けることになるだろうとしている。
もっとも「Swiftを利用するサービス事業者はまだほとんどない。ということは我々が最初の存在となる。
そういう面でのリスクは正直、あんまり取りたくはないけどね」と本音を覗かせる場面も。
リスクテイクが怖いのは米国のベンチャーだって同じなんですね▼

