昨今、「Web 2.0」という言葉に注目が集まっているが、「Web 2.0」に総称される技術やビジネスモデルの企業情報システム(エンタープライズ・システム)における採用は、いまだに疑問視されることもあり、あまり進んでいないのが実情だ。XML コンソーシアムでは、Web 2.0 部会とWeb サービス実証部会の活動成果をもとに、企業情報システムにおけるWeb 2.0 実装の手引きとして「エンタープライズ・システムのための提言書」をまとめた。 今回は、Web上で公開されているWebAPIを利用したマッシュアップ・アプリケーションの例を取り上げてみる。 (XMLコンソーシアム)
WebサービスをXSLTを利用してマッシュアップする
Webブラウザを使って複数のREST型Webサービスを呼び出し,そこで得られた情報を基に,マッシュアップした内容を表示するアプリケーションを組んでみる。節 2.1で紹介するマッシュアップの例は,XML,XSLTを利用しているので,以下ではXSLTマッシュアップと呼ぶことにする。ここに示す例では,WebブラウザとしてIE6を想定しており,他のブラウザではうまく稼動しない。XSLTプロセッサを用いて,予めHTMLに変換しておくことによって,他のWebブラウザでもみえるようになる。また,IE6においても,ポップアップを許可すること,異なるドメイン間へのアクセスを許可することが必要となるので,閲覧,実行する際には,注意されたい。
1. XSLTマッシュアップ
ここに紹介するXSLTマッシュアップでは,マッシュアップに関わるWebサービスの情報,パラメタなどの基礎的なデータをXMLで保持し,そのXMLに関連付けたXSLTによって,REST型Webサービスを呼び出し,HTMLにまとめる形を採用することによって,簡単にマッシュアップ・アプリケーションができる。

XSLTマッシュアップでは,XSLTによる変換処理をどこで行うかによって,クライアント変換型とサーバー変換型の2つの種類がある。クライアント変換型のXSLTマッシュアップでは,WebサイトからXMLをダウンロードして,WebブラウザのXSLT変換処理を利用する。一方,サーバー変換型のXSLTマッシュアップでは,Webサービスの呼び出し時に変換指示用のXSLTを指定して,サーバー側でXSLT変換を行う。
複数のWebサービスをマッシュアップする際に,Webサービスの連携の仕方によって,並列型と直列型がある。複数のWebサービスを順に呼び出し,その結果をマッシュアップする形態を並列型マッシュアップ呼ぶ。もう1つの形態である直列型マッシュアップは,1つのWebサービスを呼び出して,その応答メッセージからあるキーワードを抽出し,それを手掛かりに別なWebサービスを呼び出して,その結果をマッシュアップするという形態である。直列型では,はじめに呼び出したWebサービスの結果によって,それ以降のWebサービスが呼び出されるために,結果として得られるデータの意外性が生じやすい。節 2.1で扱うWebサービスの種類とその内容について以下の表 1,表 2に示す。
項 2.1.2に示す例では,クライアント変換型の直列型XSLTマッシュアップであり,項 2.1.3の例では,サーバー変換型の直列型XSLTマッシュアップである。利用するWebサービスを表 1に示す。
サービス | 内容 | 備考 |
---|---|---|
hon.jp | 電子書籍の検索 | hon.jpの電子書籍メタデータDBの内容を取得 |
amazon.co.jp | 書籍の検索 | amazon.co.jpの書籍情報の内容を取得 |
項 2.1.4のWebサービスの例では,クライアント変換型で,直列型と並列型を混合させた形態である。利用するWebサービスを表 2に示す。
サービス | 内容 | 備考 |
---|---|---|
kanzaki.com | 写真のメタ情報獲得 | 写真のメタデータをRDFとして獲得する |
ウェザーハックス | お天気情報獲得 | 今日,明日,明後日の天気情報の取得 |
グーグルマップ | 地図情報 | 位置情報を元に地図を表示 |
hon.jp | 電子書籍の検索 | hon.jpの電子書籍メタデータDBの内容を取得 |
じゃらんWebサービス | 宿・ホテル情報獲得 | 宿表示API ライトを利用 |
この記事は参考になりましたか?
- エンタープライズ・システムのためのWeb 2.0連載記事一覧
-
- WebサービスをXSLTを利用したマッシュアップとそのサンプル
- はじめに~エンタープライズ・システムのための提言書
- Web 2.0は企業システムにとっての新たなパラダイムシフトか?
- この記事の著者
-
XMLコンソーシアムWeb2.0部会 小林 茂(日本ユニシス)(エックスエムエルコンソーシアムウェブ2.0ブカイ コバヤシ シゲル(ニホンユニシス))
メインフレーム系の日本語処理、文書関連の業務を通し、XMLなどの技術に触れ、XML やWebサービス、SOAに関するITコンサルなどを経験。現在は、次世代の利用者環境に必要な基盤技術の研究開発に従事。
XMLコンソーシアムのWeb2.0 活用部会で、Web技術、セマンティックWeb技術などの応用に関心をも...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア