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紛争事例に学ぶ、ITユーザの心得

民法改正で準委任契約も変わる

 前回は、来年に予定されている民法改正の中で、今後のIT開発契約に大きな影響を与えると思われる請負契約の変更について書きました。今までは、受注者が完成した成果物を納品することでのみ支払いを受けられるとしていた請負契約が、部分的な納品でも代金を請求できるようになったことは、ユーザにとってもベンダにとっても契約についての考えを改めなければならない”事件”かもしれません。

準委任契約とは

 今回は、請負契約と並び、IT開発でよく行われる準委任契約の変更について解説したいと思います。準委任契約について、新しい民法では今まで明文化されていなかった”仕事の成果”に関する条項が追加されたのです。

 その説明をする前に、少しだけ準委任契約とは何かについて触れておきましょう。そもそも、準委任契約とは、発注者が受注者に事務を委託するものです。"ソフトウェア等の成果物を作ってあげる”のではなく、発注者がソフトウェアを作るのを”代わってやってあげる”という意味合いの契約です。よく似ているようにも思えますが、両者は受注者が何の対価としてお金をもらうのかという点が異なります。請負契約では、納品物は仕事の成果物になります。IT開発ならプログラムや設計書が成果物になるのですが、モノさえ渡せば、それを、どこでどのように作っても問題はありません。一方、準委任契約では、代わりに作業をしてあげるというサービス自体が費用請求の対象になります。例えば、IT開発において、本来はユーザが作るべき要件定義書をベンダが代わって作ってあげるような場合は、準委任契約になることが多いようです。受注者は発注者の指示に基づき、主として専門性の高い仕事を代わってあげることになり、支払いの対象は受注者の工数や時間だったりするわけです。

 簡単に言えば、請負代金を受け取るには成果物が必要であり、準委任契約でお金をもらうには、仕事をしてあげた事実が必要ということでした。

準委任契約にも”成果”に関する条項が追加

 ところが、今回の民法改正では、この考え方が少し変わっているようです。委任契約 (ここでは準委任契約も同じと考えてください。) について定めた民法第六百四十八条に以下のような条文が新しく追加されたのです。

  (成果等に対する報酬)

 第六百四十八条の二 委託事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引き渡しを要するときは、報酬は、その成果の引き渡しと同時に、支払われなければならない。

 後半の”同時に、支払われなければ……”という部分については、色々とエクスキューズがあるようで、本当に同時でなくても良いようですが、問題は、委任契約(準委任契約)のことを定めた法律に、”成果等の引き渡し”という言葉が出てきたことです。今まで準委任契約と言えば一定のスキルを持った人間が発注者の指揮命令の元、働いた時間(工数) に対して費用を支払っていましたが、新しい民法では、それ以外に、働いた成果に対して費用を支払うという選択肢ができたことになります。「成果」という言葉の解釈も色々ありそうですが、従来の請負契約で見られた「成果物」もこの中に含まれると考えられ、”今回の契約は時間ではなく作ってくれたプログラムにお金を払うようにしよう。”という契約を準委任で結べることになります。

次のページ
準委任契約と請負の区別はどこで?

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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