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World of WatsonのステージにCEO ジニー・ロメッティ氏登場、「WatsonはNo1」

 IBM World of Watson 2016で、もっとも大勢の人を集めたのがIBM CEO ジニー・ロメッティ氏のキーノートセッションだ。ロメッティ氏は、こういった大きなイベントの際にも、これまでキーノートのステージに登壇することはほとんどなかった。なので、日本の記者の前でこれだけ長時間に亘り講演を行うのはおそらく始めてのことだろう。今回新しくなった「Watsonのイベント」にロメッティ氏が登場したことからも、Watsonへのかなりの「力の入れよう」が伝わってくる。

WatsonのAIはArtificial IntelligenceではなくAugmented Intelligence

IBM CEO ジニー・ロメッティ氏
IBM CEO 
ジニー・ロメッティ氏

 「2020年までに、Watson関連の市場規模は1兆円を超えます。そしてWatsonは、ビジネス用のAIプラットフォームとしてはNo1の存在です」―冒頭からこう主張するのは、公の場に登場すること自体が珍しいIBM CEO ジニー・ロメッティ氏だ。

 Watsonは医療分野の診断システムのアシスタントとして、すでに2億人の患者のために使われている。教育現場でもWatsonは利用されており、これも大きく拡大している。

 「AIをビジネスとして行う際には、目標が大事です。IBMでは拡張知識(Augmented Intelligence)を大事にしています。そして、人と機械が一緒にやっていくことが重要です。一緒にやるためにも、知識の拡張が必要となるのです」(ロメッティ氏)

 重要なのは、ユーザーが持っている知財、つまりはデータだ。これは他人のものではなく、自分たちのためのものだ。データが基本的な競争力を生み出す「素」になる。なので、誰にデータを渡すかはかなり慎重にならなければならない。そしてデータの蓄積は、知識の累積ということ。データがあれば、Watsonが知識に変える。知識が生まれれば、それを使ってビジネスを変革できるのだ。

 もう1つ重要になるのがエコシステムだ。

 「WatsonはIBMだけのものではありません。エコシステムがあったからWatsonは可能となりました。たくさんの大学や研究所があり、大勢の開発者がいたから実現できました」とロメッティ氏。1つ1つの組織は小さなものかもしれないが、Watsonを活用した結果は大きなものとなっている。Watsonのエコシステムには、社員が10人しかいない会社もあれば1万人規模の会社もある。世界中の開発者が、自分の仕事のうちの53%でがコグニティブの機能を組み込むことに取り組んでいる。

 さらにWatsonを成功させるためには、エンタープライズレベルのクラウドも必要だと言う。IBMでは、クラウド上で誰もがWatsonの機能を使えるようにしている。そんなWatsonを活用するには、業界に特化することも鍵となる。業界特化型のWatsonとしては、すでに金融やヘルスケアの領域のものがある。

次のページ
Watsonは単なるAI技術ではなくコグニティブビジネスを実現するもの

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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