企業向けモバイルアプリの開発におけるポイントとは?
スマートフォンやタブレット端末といった、いわゆる「スマートデバイス」の企業利用の裾野が大きく広がっている。ノートPCよりはるかに可搬性に優れ、同時にフィーチャーフォンよりはるかに高機能なスマートデバイスは、場所に縛られないワークスタイル変革を実現し、業務の生産性を向上させる起爆剤として、成果を上げる企業も増えてきた。今や企業におけるスマートデバイスの活用は、単なる「便利ツール」からビジネスの「武器」へと大きく変化している。
事実、スマートデバイスの導入によりこうした効果を手にする企業が続々と現れる一方で、なかなか思ったほどの効果を挙げられない企業も多い。その違いはどこにあるのだろうか?
「単純に、スマートフォンを使ってメールやスケジュールを確認するだけでは、導入効果は自ずと限られてしまいます」
こう指摘するのは、企業向けモバイルアプリケーションの開発で広い実績を持つ株式会社ジェーエムエーシステムズ(JMAS)事業企画部 プロダクト企画グループの傅寳幸宏氏。JMASはもともと、企業の基幹システムの構築や運用に強いSIerとして広く知られていたが、6年ほど前から企業向けのモバイルアプリ開発にも進出し、これまで約80社において500超の顧客企業のモバイルアプリ開発に携わってきた。
現在も多くの企業から業務用モバイルアプリ開発の依頼が絶えない同社が持つ強みについて、傅寳氏は次のように説明する。
「もともとお客様のシステムの構築と運用に深く携わってきたので、モバイルアプリを開発する際も単にフロント部分だけでなく、バックエンドのシステムと連携する仕組みまでカバーできるのが強みです。また近年では、クラウドと連携するアプリの開発にも積極的に取り組んでいます。これにより、単にメールやスケジュール、ドキュメントを参照するだけのアプリよりはるかにお客様の業務に深く入り込んだソリューションを提供できます」
また、同社が「グロースハッキングモデル」(トライアル)と呼ぶ仕組みがある。実システム検討企業や事業部門向けに、まず小さい予算で小さく始めることを前提にプロトアプリを開発し、実際に利用して評価した上で、その後の投資判断や実構築へとつなげ、ビジネスを拡大していくという考え方だ。
「モバイルアプリのUIはPCのそれとは根本的に異なりますから、入念に設計すると同時に、お客様との認識の齟齬が生じないよう、開発プロジェクトの早期にモックアップを提示して意識合わせをしながら開発を進めます。また、現場で使ってみないと本当の使い勝手は見えてこない部分も大きいため、なるべく早い段階でリリースして、ユーザーからのフィードバックを反映させながら次のバージョンを段階的にリリースしていく開発プロセスを導入しています。これにより、モバイルアプリに求められる早期リリースの要件にも応えられるようになります。世の中の変化に対応するために、お客様は新しい仕組みの検討が必要になっています。しかし、いきなり大きな投資はできません。グロースハッキングモデルを提供し、まずは小さい予算で、小さく始めていただくことで、お客様の要件やビジネス環境の変化、新技術の登場などに柔軟に対応できる仕組みをとっています」(傅寳氏)
こうしたグロースハッキングモデルの仕組み※や、アジャイル開発手法を提供していることが、JMASがビジネスパートナーとして多くの企業から高く評価される一因だという。
※注釈:JMASではモバイルデバイスやモバイルアプリそのものをある種の”思考ツール”としてとらえて試行錯誤を繰り返すアプローチを提唱しており、このようなアプローチをグロースハッキングモデルの他に「Fail fast -Success fast(早期の失敗が、早期の成功につながる)」と表現することもある。クロスプラットフォーム環境のアプリ開発をいかに効率化できるか?
JMASのモバイルアプリソリューションが持つもう1つの大きな価値は、「クロスプラットフォーム開発」にある。クロスプラットフォーム開発とはその名の通り、複数のOSプラットフォームにまたがるアプリ開発のことを指す。
企業が利用するクライアントPCでは、OSシェアの大多数をWindowsが占める。しかしスマートデバイスの世界はAndroidにiOS、Windows Mobileと、複数の異なるOSプラットフォームが並立し、常にシェアを競い合っている状態だ。そのため、すべてのOSプラットフォームで動作するアプリを開発しようと思えば、基本的にはそれぞれ個別にネイティブアプリを開発する必要がある。
こうした背景から、かつては自社で導入するスマートデバイスの機種やOSを統一する企業が少なくなかったが、スマートデバイスの企業利用が始まった頃と現在では企業の取り巻く状況が変わってきたと傳寳氏は言う。
「企業としては、数多くあるスマートデバイスの中から自社の要件に合ったものや、魅力的な機能を持ったものを積極的に導入していきたいと考えます。そうなると、自社内にあるスマートデバイスをさまざまな機種に段階的に入れ替えていくことになり、社内では常に異なる機種やOSプラットフォームが混在することになります。また、従業員の私物デバイスを業務利用するBYODを実践する上でも、プラットフォーム混在環境への対応は必須といえます」
しかし言うまでもなく、1つのアプリを異なるプラットフォームに向けて別々に開発し、メンテナンスしていくには、膨大な工数が掛かる。こうした課題を解決するために提唱されているのが、一度プログラムコードを書けば、ほぼ自動的に複数プラットフォーム向けのアプリが開発できるクロスプラットフォーム開発だ。
こうしたコンセプトはかなり以前から存在しており、開発ツールもいくつか存在していた。しかし実際には、こうしたツールを使って開発したアプリは品質やパフォーマンスの面で課題が多く、クロスプラットフォーム開発の理想の実現にはほど遠かった。
しかしここ数年の間で、クロスプラットフォーム開発の技術は劇的に進化し、開発ツールの品質も飛躍的に向上した。例えばCordovaやXamarinといったクロスプラットフォーム開発ツールは現在ではモバイルアプリ開発の現場で広く使われるようになり、今も着実に進化を遂げつつある。JMASでも複数の開発ツールを適材適所で使い分けながら、異なるOSプラットフォーム上で動作するモバイルアプリの開発を手掛けているという。
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