EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

テーマ別に探す

(第14回)  景気回復期に伸びる会社、伸びない会社

  2014/02/25 08:00

固定費型企業へは、強気で値引き交渉に臨め

 固定費型企業は、限界利益率が大きくないと損益分岐点に到達できません。固定費投資が効果を発揮していれば、図1のように限界利益線が急角度(限界利益率が大きい)になり、限界利益が固定費(損益分岐点)を超えれば、利益の増加率が大きくなることがわかります。限界利益の増加分が、利益の増加分です。

 通常の固定費型企業は限界利益率が大きく、一定の売上確保が課題なので、顧客の立場からすれば、強気で値下げ交渉すれば、値下げを引き出せる可能性が高いことも知っておいてください。

 例をあげましょう。自社で設計部門や工務部門を持っているハウスメーカーで家を建てる場合、値引き交渉は、成功の可能性が高くなります。限界利益率が大きく値引き余地があり、仕事を受注した方が売上高の確保になるからです。(もっとも受注が多く集中している場合は無理ですが・・)

 これに対して、元請型(下請けに仕事を回す外注型)のハウスメーカー(変動費型企業)は、限界利益率が小さく、値引き交渉は難しいと考えてください。また受注量が増えても外注先が確保できれば、建設はすすめることができます。この結果、変動費型企業は、売上拡大を固定費型企業より進めやすく、売上高も大きくなります。

売上高の変化から、利益の変化を読む方法

 図2を見てください。当期の売上高、変動費、限界利益が同じA社とB社があります。固定費は、A社が200、B社が100と違いがあります。両社とも売上高が10%増加した場合、営業利益はどう変化するでしょうか。

固定費の大きさが利益の変化率に影響する  
  図2 固定費の大きさが利益の変化率に影響する

 A社の営業利益は30%伸び、B社は15%伸びています。売上高が10%減少した場合、A社の営業利益は△30%減少し、B社は△15%の減少でした。

 固定費が大きいA社の方が、利益の変化率が大きくなっています。売上高と営業利益の間には、一定の関係がありそうです。

 結論からいえば、売上高の伸び率×(1÷経営安全率)=営業利益の伸び率という関係があります。(1÷経営安全率)を「営業レバレッジ係数」と呼びます。経営安全率が小さいほど営業レバレッジ係数は大きくなり、営業利益の増減率に影響します。

売上伸び率と利益伸び率の関係  
  図3 売上伸び率と利益伸び率の関係

 図3の営業レバレッジ係数の分析で示したように、(1-経営安全率)は、(限界利益÷営業利益)となります。そして以下の計算により、営業利益の伸び率が求められます。

営業利益の伸び率 計算式

 よってA社の営業レバレッジ係数(当期)は、3(300÷100)で、B社は、1.5(300÷200)です。すなわち、A社は、売上高の伸び率の3倍の営業利益の伸び率になることを意味しています。売上高の伸び率10%×営業レバレッジ係数3=営業利益の伸び率30%です。B社は、売上高の伸び率10%×営業レバレッジ係数1.5=営業利益の伸び率15%です。

 この考え方を利用すれば、売上高の増減によって、利益の変化率を予想することができるのです。

 固定費型の製造業で、業績回復期に増益率が大きくなるのは、営業レバレッジ係数が大きいからです。固定費が大きい企業(A社)は、売上高の変化に対し、利益の変化率が大きく、景気変動の影響を受けやすいとも言えます。固定費をあまり使わない卸売業などでは、営業レバレッジ係数が小さく、売上高の伸び率ほどに、利益は伸びません。

 このように、固定費、変動費という費用構造の違いにより、売上高の変化が利益の変化に与える現象を営業レバレッジといいます。営業レバレッジが大きいと、利益の変化率が大きくなり、投資リスクが増すことが知られています。

 これまでの話を総括すれば、営業レバレッジが大きい企業は、投資リスクが大きく、株価の変動も大きくなるのです。


著者プロフィール

  • 千賀 秀信(センガ ヒデノブ)

    公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。日本能率協会で「計数分析力入門セミナー」を定期的に開催している。 著書に『新版・経営分析の基本がハッキリわかる本』(ダイヤモンド社)、『会社数字のコツがハッキリわかる本』(ダイヤモンド社)、『計数感覚がハッキリわかる本』(ダイヤモンド社)、『会社数字がわかる計数感覚ドリル』(朝日新聞出版)、『この1冊ですべてわかる管理会計の基本』(日本実業出版社)、『「ベンチャー起業」実戦教本』(プレジデント社:共著)、最新刊に『人気セミナー講師の会計実践講座 ― 経営を数字で考える能力 計数感覚が身につく』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。 マネジメント能力開発研究所のホームページ

バックナンバー

連載:新規事業計画に役立つ「経営分析・管理会計」の考え方・活かし方

もっと読む

All contents copyright © 2007-2021 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5