CRMのハイプ・サイクルでは、日本企業がビジネスの差別化につながる顧客中心的なCXを提供する上で特に重要と考えられるCRMを含む顧客関連のアプリケーション/テクノロジをはじめ、30項目のキーワード(テクノロジ、サービス、方法論、プラクティス、コンセプトなど)を取り上げている。
ガートナーのハイプ・サイクルは、横軸に「時間の経過」、縦軸に「市場からの期待度」を置く2次元の波形曲線で表されている。新規テクノロジが市場に受け入れられるまでは、総じて同じ経過をたどる。まず、初めて市場に登場した後に期待は急上昇するが(黎明期)、成果を伴わないまま過熱気味にもてはやされ(「過度な期待」のピーク期)、熱狂が冷めると市場がいったん停滞し(幻滅期)、改めて実質的な市場浸透が始まり(啓蒙活動期)、成熟したテクノロジとして市場に認知されるに至る(生産性の安定期)。
ハイプ・サイクルは、これら5つの段階で市場の成熟化の過程を示し、各キーワードはそれぞれの成熟度に従い、ハイプ・サイクル上にマッピングされている。マッピング・ドットの形状や色は、最後の成熟段階である「生産性の安定期」に至るまでに要する期間を表している。
2018年版のCRMのハイプ・サイクルには、顧客に価値を提供するエンティティ/チャネルの拡大を受けた新たなテクノロジが登場している。例えば、「顧客データ・プラットフォーム」は、顧客化される前のWebサイト訪問者やモバイル利用者の永続的な追跡によって顧客化を支援し、「CRM用消費者向けメッセージング・アプリ」は、広く普及したメッセージング・アプリを介して顧客エンゲージメントを促進する。
「ワークフォース・エンゲージメント管理」は、顧客応対に従事する従業員をサポートし、「モバイル・フィールド・サービス管理」は、遠隔地の技術担当者を支援することで、業務の迅速な遂行のみならずCXの向上を図るものと期待されている。
ガートナーのアナリストで、シニア ディレクターの川辺謙介氏は、次のように述べている。
――デジタル・テクノロジによる貢献の割合が大きくなっている昨今のCXを追求するためには、各CRM関連テクノロジ/アプリケーションの成熟度合いや発展の方向性を理解しておくことが極めて重要です。企業が取るべきアクションとしては、主に2つが挙げられます。
――1つは、デジタル/リアルを問わず、さまざまなチャネルにわたる顧客行動を全方位的かつリアルタイムに把握することで、意図を解したインサイトを導出すること。もう1つは、個々の顧客に適したコンテンツを、適したタイミングで、適したチャネルから提供するCXを実現することです。
――いずれも本ハイプ・サイクルで紹介するテクノロジが大きく貢献します。また、それらのアクションを進めることで、CXの追求だけでなく、自動化の推進による人材不足への対応、トラブルの未然防止といった業務の効率化とコスト削減も期待できます。ただし、これらのテクノロジを無計画に導入するのではなく、自社の戦略・優先順位に基づいた合理的な計画を立てる必要があります。
なお、この発表について詳しくは、ガートナーが顧客向けに提供しているガートナー・レポート「日本におけるCRMのハイプ・サイクル:2018年」に掲載されている。
また、ガートナーは2019年2月19日(火)・20日(水)に東京コンファレンスセンター・品川において「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス&テクノロジ サミット 2019」を開催し、「顧客戦略を極めよ ~顧客に選ばれる企業となるために~」をテーマ に、CXに関する最新トレンドや最先端の知見、洞察を提供するという。