レノボ・ジャパンは2026年5月26日、水冷AIインフラの検証拠点「Neptuneラボ」を日本で初めて開設した。MCデジタル・リアルティ(MCDR)が千葉県印西市で運営するNRT12データセンター内の「MCデジタル・リアルティ イノベーション ラボ(DRIL)」に設置し、同社の水冷技術「Lenovo Neptune」とニデックのCDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配装置)を組み合わせた検証環境を企業向けに提供する。
AI推論ワークロードの本格化にともない、高密度GPUサーバーのラックにおける消費電力は急増しており、従来の空冷設計だけでは対応が難しいケースが増えている。データセンターの消費電力はすでに世界の電力使用量の最大3%を占めており、2030年までに現在の3倍に増加すると見込まれている。とりわけ冷却がデータセンターのエネルギー消費の最大40%を占めるとされており(経済産業省)、冷却効率の改善が電力コスト削減のカギを握る構図になっている。
Neptuneラボでは、GPUサーバー、ラック、ネットワーク、監視システムを含むAIインフラ全体の構成を実環境に近い条件で検証できる。顧客は自社のAIワークロードに沿った性能評価、電力・冷却効率の確認、ハイブリッドクラウド環境との接続検証などをPoC(概念実証)として実施できるとしている。ISV、クラウド事業者、SIerとの共同検証によるリファレンス構成の策定にも対応する。
レノボ・ジャパン 代表取締役社長 檜山太郎氏は開所式でこう述べた。
「AI活用が実証段階から本番運用へ移行する中、企業にとってはGPU性能だけでなく、電力、冷却、運用、TCOを含めたインフラ全体の設計が重要になっています。本ラボでは、Neptuneによる水冷技術を実際のデータセンター環境に近い条件で検証できるため、顧客は導入前に具体的な構成や運用課題を把握できます」(檜山氏)
Lenovo Neptuneは、AIおよびHPC向けに設計されたレノボの液体冷却技術で、2012年に世界初の常温水冷却技術を開発して以来、現在は第6世代まで進化している。入口水温45℃以上での安定稼働に対応し、純水(蒸留水など)のみを使用するため有害なグリコール(不凍液)が不要なことも特徴の1つだ。社内テストではPUE(Power Usage Effectiveness)1.09を達成しており、消費電力のほぼすべてをコンピューティングに充てられる設計としている。x86サーバーの信頼性ではITIC調査で11年連続第1位を獲得したという。
ニデックでCDUの製品開発責任者を務める酒井哲平氏はパネルセッションで、信頼性設計の核心について「何があっても液体を止めてはならない。メンテナンス中も液体を止めずに実施できる設計を組み込んでいる」と説明した。また、ハードディスクモーターで培ったミクロン単位の精密加工技術を応用してシール性能を担保しており、ヘリウムガスを用いた出荷前の密封検査も実施しているとした。
企業のAI導入状況という背景もある。レノボとIDCが共同実施した「CIO Playbook 2026」によると、日本企業におけるAIの試験導入・本格導入の割合は2025年の21%から2026年には68%へと拡大する見込みで、93%の企業が今後12ヵ月以内にAI投資を増加させる計画だとしている。一方、88%の企業がAIへの投資でプラスのROIを期待する中、実運用へ移行できているのは約半数にとどまっており、PoCから本番導入へのスケールが課題として浮上している。
「データセンターを空冷から水冷へ転換するには、熱交換設備、配管、耐荷重設計、漏水検知体制など複数の整備が必要であり、すぐに実現できないところで苦労されているケースが多い」とMCデジタル・リアルティ 営業本部 営業本部長 北崎浩氏は語る。同社はグローバルのDigital Realtyの知見を活かし、すでにNRT12内で水冷環境の実績を積んでいるとしており、Neptuneラボはその実証環境として活用できる形で整備された。
レノボは今後、Neptuneラボを起点に顧客やパートナー企業との連携を拡大し、水冷AIインフラに関する知見を共有するコミュニティ形成を目指すとしている。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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