日東工業は、設備図面から分電盤の見積に必要な回路情報や機器情報を抽出する、マルチモーダル生成AI活用アプリケーションを開発した。日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)が支援した。日東工業の全国23営業拠点・約50名の営業担当者が利用できる運用環境を整備し、2026年10月より段階的に実業務での運用を開始するとのことだ。
分電盤の見積業務では、案件ごとに異なる形式の設備図面から、法規制や製品仕様などを読み取り、必要な機器や回路構成を検討する高度な業務知識や経験が求められるという。そのため、業務が特定の担当者の知見に依存しやすく、多くの見積依頼に対応する必要があり、迅速な対応と見積品質の両立が課題だったとしている。
こうした課題の解決に向け、両社は約1年半にわたり、見積ノウハウの整理や業務知識の構造化、人とAIの役割分担の定義、運用体制の整備を進め、生成AIを継続的に業務へ組み込むための環境づくりに取り組んできたとのことだ。
1. 建物図面から見積情報を抽出する生成AIアプリケーションを開発
両社は、建物図面をアップロードすると、マルチモーダル生成AIが分電盤の見積に必要な回路情報、機器情報、特記事項などを抽出するWebアプリケーションを開発し、日東工業の全国23営業拠点・約50名の営業担当者が利用できる運用環境を整備。システムの構成には、日本IBMが提唱する「統合AI基盤」のリファレンス・アーキテクチャを採用したという。
また、日本IBMが自社業務への適用を通じて蓄積した「Client Zero」の知見や、IBM Consulting Advantageで体系化された生成AI活用手法などを取り入れ、AIエージェント・フレームワークを実装。同アプリケーションは、特定のAIモデルやシステム環境に依存しない構成を採用しており、技術進化や業務要件の変化にも柔軟に対応できるとのことだ。また両社は、AIの活用拡大を見据え、AIガバナンスやAIセキュリティ、AIアーキテクチャのあり方を含めた、全社レベルでのAI活用基盤の検討も進めているとしている。
2. 人とAIが協働する業務プロセスを定義し、熟練者の知見を組織で活用する業務基盤を構築
同アプリケーションでは、AIが図面の読み取りと情報整理を担い、営業担当者が業務知識に基づいて抽出結果を確認・補正する。これにより、人とAIがそれぞれの強みを生かしながら、見積業務の効率化と対応品質の向上を目指すという。また、AIによる抽出結果や営業担当者による修正内容を構造化データとして蓄積することで、これまで個人の経験や知識に依存していた見積ノウハウを組織全体で活用・継承できる知識基盤を構築したとのことだ。
同取り組みでは、生成AIの導入にとどまらず、人とAIがそれぞれの強みを生かして協働する業務プロセスの設計や、熟練者が保有する業務知識・判断プロセスの構造化を進めたという。また、業務プロセスや運用のあり方を含めて見直すことで、見積業務の効率化と見積品質の向上に加え、これまで個人に依存していた知見を組織全体で活用・継承できる仕組みを実現したと述べている。これは、AI活用を前提に業務や役割を再設計し、継続的な価値創出につなげる日本IBMの「AIオペレーティング・モデル」の考え方を実践した事例だとしている。
両社は、営業現場での利用を通じて得られるフィードバックを継続的に反映し、図面読み取り精度や操作性の向上、対応可能な図面の種類や範囲の拡大を進めていくとのこと。また、見積業務を通じて蓄積されるデータや、日東工業が長年培ってきた業務ノウハウを活用し、設計、生産、保守など、周辺業務への展開も検討していくという。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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