「クラウドオルソー」から「クラウドファースト」へ企業のIT戦略が変化
国内パブリッククラウドサービス市場は普及期を迎え、システム導入(新規/刷新/更新)時に、クラウドを検討するユーザー企業が増加している。特に、大企業ではクラウドの検討は一般化しつつあり、パブリッククラウドサービスは重要な検討項目となっている。また、クラウドと伝統的なITを同等に比較検討する「クラウドオルソー(Cloud Also)」から、クラウドを優先的に検討する「クラウドファースト(Cloud First)」へ、と変化も見られる。
2015年の国内パブリッククラウドサービス市場では、IT資産の継承を目的とし、既存の業務アプリケーションをIaaS/PaaS環境上で稼働させる「クラウドイネーブルド」の動向 が顕著に見られた。また、一般消費者向けWeb/Mobileアプリケーションの開発/稼働環境としてIaaS/PaaSを利用することは一般化している。
汎用性の高いサービスはベンダーの寡占化が見られる
国内パブリッククラウドSaaS市場では、モバイル対応に優れた汎用的なアプリケーション(コラボレーティブやCRM:Customer Relationship Management)は「クラウドファースト」が浸透したといえる。また、Human Capital Management(HCM)や「マイナンバー管理ソリューション」といった新しいアプリケーションは、SaaSモデルでのみ提供されることが増加しており、ユーザー企業の意識にかかわらず、ベンダーの「クラウドファースト」が進んでいる。
国内パブリッククラウドサービス市場は、成長市場であることはいうまでもない。また、汎用性の高いサービス(IaaSやコラボレーティブアプリケーション)はコモディティ化が進んでおり、ベンダーの寡占化が見られる。一方、ユーザー企業の裾野は広がっており、産業特化型アプリケーションなどはサービスの多様化/細分化が進むとIDCではみている。
IDC Japan ITサービス リサーチディレクターの松本聡氏は、「国内パブリッククラウドサービス市場では、汎用性の高いサービスは寡占化が進むため、生き残るベンダーは数社にとどまる。したがって、アプリケーション領域での差別化が多くのベンダー にとって重要な事業戦略となる」と、分析している。
今回の発表について詳細は、IDCが発行したレポート「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2016年~2020年」にまとめられている。