ICT企業では40%近くが導入に向けて取り組んでいる
OpenStackは、オープンソースソフトウェア(OSS)のクラウド基盤/管理ソフトウェアとして、およそ4万人もの規模からなるオープンソースコミュニティで開発されている。WalmartやeBay、BMWのようなグローバル大手企業での採用事例が出ており、企業向けのクラウド基盤として注目を集めている。
こうした市場背景の中、IDCではサーバー仮想化を実施している国内企業に対してOpenStackの導入状況を調査した。この結果、「すでに本番環境で使っている」の回答割合が7.0%となり、前回調査の4.5%から2.5ポイント上昇した。「試験的に使用し、検証している」は8.3%で、前回調査と比較してほぼ変化が見られなかった。
今回調査では「使用する計画/検討がある」の回答割合が前回調査の5.2%から大きく上昇し17.9%になり、導入に向けて具体的な動きが出てきていることが分かる。また、「OpenStackを知らない」の回答割合が前回調査よりも8.5ポイント下がっており、認知度も上昇していることが判明した。
また、OpenStackの導入状況について、情報サービスプロバイダーやシステムインテグレーターのようなICT関連サービスを主力事業としている企業と、それ以外の製造や流通、金融、一般サービスなどを主力事業としているNon-ICT企業に分けて分析した。
この結果、ICT企業では「すでに本番環境で使っている」の回答割合が8.2%、「試験的に使用し、検証している」が10.8%、「使用する計画/検討がある」が20.5%となり、合計で約40%のICT企業がOpenStackの導入に向けて取り組んでいることが判明した。
課題については「OpenStackに精通しているエンジニアが少ない」が最多
また、No-ICT企業でも本番環境で使用、検証中、計画/検討の回答を合計すると約30%の企業が、OpenStackの導入に向けて取り組んでいることが分かった。ICT企業に限らず、多くのNon-ICT企業での導入が期待される。
さらに、OpenStackを本番環境で使用、検証中、計画/検討している企業に対して、OpenStackに期待する効果について質問したところ、「クラウド基盤の運用の効率化」が25.7%で最も回答が多く、「クラウド環境の構築の迅速化」が21.7%、「アプリケーション開発の迅速化」が21.1%となっている。
OpenStackは、クラウド基盤の運用効率化に加え、スピード向上に対する期待が高いことが判明した。そして、「自社エンジニアのスキルアップ」が19.7%と続いており、これはICT企業だけで見ると22.1%と最も多い回答で、OpenStackを通じてエンジニアのスキルが向上することへの期待が表れている。
OpenStackを使用していく上での課題については、「OpenStackに精通しているエンジニアが少ない」が28.3%と最も回答が多く、「セキュリティの脆弱性に不安がある」が25.7%で続いた。これらは、OpenStackに限らずOSSを企業で使用していく上での共通した課題であるとIDCでは推定している。
「関心/勉強のフェーズから具体的な導入を計画/検討するフェーズへ」
3番目に多い回答として「半年ごとのメジャーリリースに合わせた対応ができない」が19.7%となった。半年ごとのメジャーリリースは、OpenStackの大きな特徴の1つだが、このバージョンアップのスピードに追従することができない企業が約2割あり、課題と表裏一体となっていることが判明した。また「ネットワーク環境の構築/管理が難しい」の回答も19.7%を占め、OpenStackのネットワークはNeutronコンポーネントに対する課題が残されている結果となった。
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーの入谷光浩氏は、「国内におけるOpenStackは関心/勉強のフェーズから具体的な導入を計画/検討するフェーズへと移った。ヤフーやNTTグループをはじめとし、既に導入から使用フェーズに入っている先進的な企業も増えつつある。現状はOpenStackスキルのあるエンジニアのリソースは限られているため、短期間で加速度的に導入が進むとは考えにくいが、着実に導入する企業は増えていくことが予測される。OpenStackの導入を検討している企業は事前にしっかりと課題を抽出し、導入プロジェクトを滞りなく進めていくことが重要である」と述べている。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2016年 国内インフラストラクチャソリューション市場 ユーザーニーズ動向調査」にその詳細が報告されている。