「IT/ビジネスの効率化」と「ビジネス変革」が両輪となり成長を促進
現在、国内パブリッククラウドサービス市場は、既存のIT/ビジネスの効率化に対する企業の期待が成長をけん引している。一方、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)に対する企業の注目度は高まっており、DXを支えるIT基盤としてパブリッククラウドサービスの利用が増加することが見込まれる。
今後の国内パブリッククラウドサービス市場は、「IT/ビジネスの効率化」と「ビジネス変革」が両輪となり、同市場の成長を促進する。
一般的に新興市場では、製品/サービスの普及が進み、市場規模が拡大すると前年比成長率は「鈍化傾向(右肩下がり)」となる。もちろん、ストック型ビジネスであるパブリッククラウドサービスは、フロー型の製品/サービスとは異なる推移となるが、前年比成長率の鈍化は回避が難しい。しかし、国内パブリッククラウドサービス市場は、成長鈍化を乗り越え、新たな成長期を迎えようとしている。
APIエコノミーがこれまでとは異なる新しいIT市場を創出し成長を加速
具体的には、国内パブリッククラウドサービス市場の前年比成長率は、短期的には「鈍化傾向」にあるが、2019年以降は「下げ止まり」の傾向となる。さらには、2021年以降は、前年比成長率が「上昇する(右肩上がり)」可能性を示唆している。
同市場は「効率化」と「変革」といった2つの成長エンジンを備えており、その1つだけでも強い促進力を有している。また、「効率化」と「変革」は互いに強い影響を与えるようになり、これらの2つが連携することによって、これまで以上の大きな成長が見込まれる。
さらには、企業内/外を問わず多様なシステム/サービスが連携し、高いビジネス価値を創出する「API(Application Programming Interface)エコノミー」が形成されるようになる。この、APIエコノミーこそが、これまでとは異なる新しいIT市場を創出し、国内パブリッククラウドサービス市場の成長を加速させる。
現在、多くのベンダーはクラウド/DX事業の推進施策として、ユーザー企業との「共創」を重要なテーマとして掲げている。IDC Japan ITサービス リサーチディレクターの松本聡氏は、次のように分析している。
「共創は、ユーザー企業がDXを実現するために有効な施策である。しかし、共創ではユーザー企業とベンダーの『強み/良い面/特徴』の足し算だけではなく、ビジョンやリスクを共有する必要がある。特に、『絶対的な正解』がないDXにおいては、リスクを共有するといった姿勢が、信頼されるパートナーの必須条件となるであろう」
今回の発表は、IDCが発行したレポート「国内パブリッククラウドサービス市場予測アップデート、2016年~2020年」にその詳細が報告されている。