この調査の対象市場はEnterprise Resource Management(ERM)、Supply Chain Management(SCM)、Product Lifecycle Management(PLM)、AnalyticsからなるEA(Enterprise Applications)市場。国内862社のユーザー企業から2017年度(会計年)の経営課題とITビジネスに関する支出動向、各システムの導入状況と今後の予定、予算動向、さらに3Dプリンターの活用、製造業のデジタルマニュファクチャリングに対する取り組み状況調査を実施した。
2017年度は基幹系データの本格活用に向けたPaaS利用の回答が多い結果に
ユーザー企業の2017年度の経営課題では「生産性向上」を、情報システム戦略では「既存システムの統合、連携強化」を重視しており、デジタルトランスフォーメーションの検討は優先順位が低い結果を示した。ビジネスに対するIT支出は、前回調査同様に「セキュリティとリスク対策」が最も多く、さらに「人事関連」「営業」「マーケティング」「全社対象業務」に対する支出増加が見込まれる。
EA領域では、ERM分野の刷新需要が高く、導入形態は従来のオンプレミスから、運用面ではIaaS、部門利用や機能補完にSaaS、そして2017年度は基幹系データの本格活用に向けたPaaS利用の回答が多い結果となった。EAシステムの全般的な傾向では、システムデータを業務に生かすため、ユーザー向けのインターフェイスの刷新や、機械学習などを用いたより高度な分析に基づくアウトプット/基幹系業務の効率化を図るインプット機能の拡張が進んでいる。
EA分野でもオンプレミスからIaaS/SaaSのクラウド利用が本格化
国内EA市場の主要産業である製造業では、「設計は国内、生産は海外」という方法から、製品投入市場のグローバル化により各国の指向を捉える海外設計も増えており、より広範囲なデータ共有とその活用が求められている。
そこで、デジタル化の取り組みを0~5の段階で調査した結果、現状の製造関連情報とルールのデジタル化(段階1)から、2017年度はIoTなどの活用による可視化(段階2)、2018年度以降は設計と製造のコラボレーションとシミュレーション(段階3)へと、IT活用による生産の高度化を目指していることが明らかとなった。
IDC Japanソフトウェア&セキュリティ シニアマーケットアナリストのもたい洋子氏は「国内EAソリューション市場の主要産業である製造や金融、流通ではこれまで海外拠点展開を積極的に進めており、その経営状況を包括的に捉える可視化ニーズが顕在化している。2016年は先んじて必要なインプット情報を得るため財務アプリケーションの刷新が進み、今後に向けて最適化されたシステムの統合が図られた。EA分野でもオンプレミスからIaaS/SaaSのクラウド利用が本格化しており、2017年はデータドリブンな経営を目指し、PaaSに対する関心が高まりを見せている」と述べている。
今回の発表はIDCが発行したレポート「2017年 国内EAソリューション市場 ユーザーニーズ調査」にその詳細が報告されている。