IT投資領域では「セキュリティ」が最優先だが、2017年度計画ではAIにも注目
2017年度の国内企業のIT支出計画は、全体では前年比で「変わらない」とする企業が60%以上を占めている。しかし大企業では「増加」が「減少」だけでなく「変わらない」をも上回り、業務拡大などを背景にIT投資が活発化していることを示している。産業分野別でも、金融をはじめ大企業の比率が高い産業分野を中心にIT支出の増加傾向が強くなっている。
IT投資領域を詳しく見ると、2016年度実績では、相次ぐ情報セキュリティ事件を背景に、引き続きすべての従業員規模/産業分野でセキュリティに関する項目がトップとなった。その一方で、2017年度に計画されているIT投資領域で用いられるテクノロジー/手法としてAI(Artificial Intelligence)が前年度よりも大きく回答率を伸ばしており、今後取り組むべき新しいテクノロジーとして注目されていることを示している。
大企業を中心に社内ITインフラ/システムの運用や開発の内製化が進行
具体的なIT部門の取り組みとしては、社内ITインフラエンジニアや社内システム運用人材の強化を挙げる企業が増えている。社内向けシステムの開発を行うITエンジニアの数を増やすとの回答も従業員規模に比例して多く、セキュリティや営業系システムなどIT投資の多い領域を中心に開発が行われている。加速するビジネス環境の変化を背景に、コストの抑制だけでなく、競争力の獲得のためにシステムの改修や刷新を自社で迅速に行えるようにするため、大企業を中心に運用や開発の内製化を進める動きが強まっている。
その一方で、IT部門が関与しない、ユーザー部門独自のIT予算がある企業も従業員規模に比例して多く、特に大企業/中堅企業を中心に、AIやIoT(Internet of Things)などへの投資が目立っている。製品やサービスが使いやすくなったことなどを背景に、大企業/中小企業のユーザー部門がIT部門の対応を待たず積極的に新しいテクノロジーを導入していることがわかる。
IT投資は大企業に牽引されて拡大を続けており、しかもIT部門だけでなく、ユーザー部門独自のIT投資も活発化している。そして、社内ITインフラや社内システムの運用、開発を自社の人材で賄おうとする潮流もますます強まり、その対象はデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える新しいテクノロジーの活用にまで及んでいる。
IDC Japan ITサービスのシニアマーケットアナリストの吉井誠一郎氏は「国内ITサービスベンダーには、単なる開発の請負ではなく、最先端のテクノロジーや手法によって顧客の社内エンジニアをサポートする役割が求められるようになるであろう」と分析している。
今回の発表は、IDCが発行したレポート「2017年 国内CIO調査:ITサービス/アウトソーシング利用実態」にその詳細が報告されている。レポートでは、国内企業の経営課題、IT予算増減状況、IT調達に関する取り組みなどについての調査結果をもとに、企業のIT投資動向、ITサービスベンダー選択基準などを明らかにし、今後求められるITサービスベンダーの対応について分析している。