Windows 10未導入企業の移行時期はEOSの直前に集まる傾向
労働人口の減少が叫ばれるなか、多くの企業では、人材確保を目的に、ワークライフバランスを実現する働きやすい環境の整備を自社のIT戦略のひとつに位置付けている。加えて、中小企業においては、生産性向上とセキュリティ対策の課題を解決しうる、クライアント環境の整備が重要かつ必須の取り組みであるといえる。
なかでも、クライアントデバイスで利用するOSやOfficeアプリケーションは最も重要な選択事項であり、適切な導入計画策定が求められる。そこで、ITRでは、2018年8月に従業員数300人未満の中小企業に勤務し、自社のIT環境(OS、Officeアプリケーションなど)を把握しているとした回答者を対象に「企業におけるIT環境意識調査」を実施し、その動向を確認した(有効回答:404件)。
まず、中小企業において最も多く利用しているOSを見ると、5割以上がすでにWindows 10を利用していることが確認された。また、Windows 10未導入企業のうち、7割は2020年1月14日のWindows 7のサポート終了(EOS)前には移行を完了する予定であり、その時期については「時期詳細は不明だが、Windows 7の延長サポート終了前」と考えている企業が30%と多く、次いで「2019年下半期」が19%を占めた(図1)。このことから、移行時期はEOSの直前に集まる傾向が見られた。
Office 365によるセキュリティ対策と実利用における効率を評価
また、中小企業で利用しているOfficeアプリケーションを見ると、「Office 365 ProPlus/Business Premium」が3割を上回りトップとなった。
さらに、このOffice 365利用企業を対象に、同製品を利用した経緯や背景を確認したところ、「セキュリティ対策の一環としてOffice 365を利用」が最多となり約半数の企業が選択し、2番目には「常に最新の機能を備えるアプリケーションの利用」(34%)、次いで「1ユーザーで複数端末が利用可能なライセンスの希望」(26%)となり、Office 365によるセキュリティ対策と実利用における効率を評価する回答が目立った(図2)。
この理由としては、Office 365の備える未知のマルウェア対策機能やメール・文書の暗号化機能が、脅威に対する防御策として効果を発揮することが期待されていると考えられる。
ITRのシニア・アナリスト中田陽子氏は、「クライアント環境は、ユーザーが業務を遂行するうえでの重要なインフラです。今回の調査結果から、中小企業はWindows 10とOffice 365を利用することで、業務効率の向上とセキュリティ対策の面で多数のメリットが得られると考えます。また、働き方改革の推進を見据えて、時間や場所を問わず業務を遂行できるクラウドサービスを導入し、環境を準備することが推奨されます」と提言している。
ホワイトペーパー「中小企業に求められるクライアント環境」はITRのWebサイトから無償でダウンロード可能だ。