この調査は、昨年に続く2回目であり、第四次産業革命によってもたらされる機会を積極的に活用する準備ができていると回答した日本の経営者が、前回に比べて大幅に増加したことが明らかになった。新技術への投資目的についても、既存の市場の変革といった「攻め」の要素をより重視すると回答した経営者が半分以上を占めた。
一方で、自社の年次実績を評価するうえで最も重要な尺度について尋ねたところ、世界全体では「社会的影響度」と回答した経営者が最多だったが、日本では「顧客満足」と答えた経営者が最も多く、対照的な結果となった。
日本企業が第四次産業革命によりもたらされる機会を最大限に活用して巨大イノベーションを主導していくためには、既存顧客を超えた社会全体へのインパクトまで視野に入れた構想力が求められていることが示唆されたとしている。
新技術による市場変革への意識が高く、技術革新の活用に自信を高める日本の経営者
第四次産業革命によりもたらされる機会を積極的に活用する準備ができているかという問いに対して、「大変自信がある」と回答した日本の経営者は38%に上り、前回調査(3%)から大幅に増加した。一方、世界全体では、「大変自信がある」との回答が前回の14%から今回調査では34%となった。
また、第四次産業革命に関わる技術への投資目的を尋ねたところ、既存の市場変革と回答する割合が56%となり、全世界の33%と比べ格段に高く(図表1)、日本の経営者が第四次産業革命による技術革新を積極的に活用することに自信を高めていることが示された。
日本企業はイノベーションに向けて攻守バランスのある組織的対応
その一方で、日本企業は第四次産業革命に関わる重要な意思決定を行う際に、意思決定プロセスの明確化、多様な利害関係者からの意見聴取、データに裏付けられた知見の活用などを通じた組織的な対応を重視する傾向が、世界全体に比べて顕著であることが示された(図表2)。
また、自社がイノベーションを進める上で「失敗と学び」が許容されていると答えた日本の経営者は62%にのぼり、世界全体の69%に比べても遜色ない結果となった。日本企業の経営者がイノベーションを推進する上で、攻守バランスのある組織的対応を追求しようとしていることが示された。
世界全体では、自社の実績評価の尺度として社会全体へのインパクトを重視する傾向が顕著に
自社の年次実績評価において最も重視する尺度として「社会的影響度」を挙げる経営者が全世界で34%となり、「顧客満足」や「従業員満足・維持」、「財務成績」「規制準拠」といった項目を上回った。一方で、日本の経営者は最も重要な尺度として「顧客満足」を挙げており(36%)、「社会的影響度」は最も少ない結果となった(図表3)。
さらに、社会を良くするための取り組みを行う動機について尋ねたところ、世界全体では「新しい収益源の開拓」を挙げた経営者の割合が46%(日本:39%)と最多で、経営において社会課題解決と新市場創造を両立させようとする傾向が高まってきていることがうかがわれた。
一方、日本の経営者においては、「競合への対応」を挙げる割合が50%と最も多く、社会への取り組みを既存の「横並び」の競合環境における対応策と捉える傾向が相対的に強いことが示された(図表4)。
今後、日本企業が第四次産業革命によりもたらされる機会を最大限に活用して巨大なイノベーションを主導していくためには、既存顧客を超えた社会全体へのインパクトまで視野に入れた構想力が求められていることが示唆された。