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週刊DBオンライン 谷川耕一

MicrosoftとOracleが本格的にクラウドで手を結ぶ


 これまで敵対していたOracleとMicrosoftがクラウドサービスで提携する。そう発表をしたのは、2013年6月のこと。この時の提携内容は、Oracleのデータベースをはじめとする各種ソフトウェアをWindows Server Hyper-VおよびWindows Azureで利用できるようにするものだった。提携の動きそのものには驚きはあったが、内容的には「まあ妥当だよね」という印象だったことを憶えている。これはMicrosoftのCEOがスティーブ・バルマー氏だった頃で、その後CEOになったサティア・ナデラ氏のオープン化戦略の前の話だ。

OracleとMicrosoftが握手し、本格的なマルチクラウド時代が始まる

ラリー・エリソン氏。2013年のOOWにて。このときはじめてMSとの提携が発表された
ラリー・エリソン氏。2013年のOOWにて。この年にMSとの提携が発表された

 そもそもこの2013年の春にOracleは、Salesforceとも改めて協業関係を強化すると発表した。これらの動きは本格的にクラウドに進出する前だったOracleの、株価対策的な側面もあったのかもしれない。その後Oracleもクラウド市場に力を入れ始めたが、先行するAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureとは、かなり引き離されたポジションに甘んじている。

 もちろん出遅れたぶんクラウド・インフラストラクチャのアーキテクチャを刷新し、第二世代化することで新たな攻勢を始めたところでもある。とはいえ日本市場での出遅れは大きく、今年5月にやっと第二世代のクラウドインフラのデータセンターを東京に開設し、追随を開始し始めたところでもある。

 そんな情況の中、米国時間の6月5日にMicrosoftとOracleが、両社のクラウド環境をシームレスに接続できるようにする協業を発表した。これによりMicrosoft AzureのAIや機械学習技術のサービスなどと、Oracle CloudのAutonomous Databaseなどをシームレスに連携させ活用できるようになる。今回の協業で企業が必要としているさまざまなクラウドサービスを、ワンストップで提供できるようになるという。

 この協業はOracle Cloudの上でOracleのソフトウェアを、Microsoft Azure上でMicrosoftのソフトウェアを別々に動かしているような企業にとっては朗報だ。これによりAzure上のアプリケーションからOracle CloudのAutonomous Databaseにアクセスするようなアプリケーションを構築して利用することや、さらにはOracleの提供する各種SaaSのサービスと連携させるなども容易となる。

 さらにこういった連携をシンプル化するために、双方のクラウドのサービスをシングルサインオンで利用できる仕組みも提供する。これによりIDの配布管理やアクセス制御のためにAzure Active Directoryを、Oracle CloudにあるOracleのアプリケーションでも使用できるようになる。

 今回のダイレクトな相互接続の仕組みは、まずはOracle Cloudの北米Ashburn(北米)とMicrosoft Azureの米国Eastのデータセンター間で6月5日から利用可能となる。今後相互接続する地域は、順次拡大される予定だ。この相互接続の環境下では、Oracle Cloud上にあるReal Application ClustersやOracle Exadata、Autonomous Databaseなどのデータベースを使用するAzureにあるカスタムアプリケーション、あるいはAzure上に展開されたJD Edwards EnterpriseOne、E-Business Suite、PeopleSoft、Oracle Retail、HyperionなどのOracleの各種アプリケーションを組み合わせての利用もサポートされる。双方のクラウドサービスを利用する際の、共同サポートモデルも提供される。このような提携の内容は2013年時点の両社の協業レベルとは大きく異なり、かなり踏み込んだ関係性を築こうとしている姿がうかがえる。

次のページ
本格的なクラウド普及期を目指してさらなる買収、協業もありそう

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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