企業と顧客の間にある顧客体験のギャップを埋める
素晴らしい商品を作れば、マーケティングなどを行わなくても商品は売れる。なのでメーカー各社は機能が豊富で品質の高い商品を、なるべく安価に作ることに注力してきた。つまりは商品価値が、機能や品質で決まった時代だ。これがここ最近は機能や性能よりも、「体験」が重視される。商品を使った体験、サービスを利用した体験、その体験でユーザーが良い感情を抱くのか、悪い感情を抱くのか。体験の善し悪しが、商品やサービスが売れるかどうかを決める時代だ。
「タクシーに乗った時の素晴らしい体験が、すぐに出てくる人はなかなかいません。しかし最悪な体験をした話ならば、すぐに出てくるでしょう」と言うのは、Qualtrics International 日本法人のカントリーマネージャー 熊代 悟氏だ。このタクシーの最悪な体験を解消したのが、Uberなどのライドシェアサービスだ。
コーヒーについては原価が20円か30円程度のものを、インスタントのパッケージにすれば50円から70円、カップに入れ提供すれば150円ほどで売ることができる。これがスターバックスになると300円、500円といった高い価格で提供される。この価格の差が「経験の価値」だと熊代氏は説明する。
経験の価値を見出し、適切に管理するソリューションを提供しているのがQualtrics Internationalだ。同社は2019年1月に、SAPに80億ドル(約8550億円)で買収された。SAPが得意なERPアプリケーションで管理されるのがOデータ(Operational Data)だ。ERPのアプリケーションは、商品を効率的かつ安価に作るための仕組みと言えるだろ。企業におけるものづくりなどのために、いかにして品質とコストを最適化し人員配置なども効率化できるのか。それを実現するのが、ERPの役目でもある。
一方で顧客の情報を管理するのが、CRMやマーケティングオートメーションなどのアプリケーションだ。顧客と企業の接点に関する情報や、顧客の行動情報を管理することで、顧客との関係性を最適化する。とはいえ、CRMなどだけでは、顧客が商品やサービスをどう使っているか、あるいは顧客と企業の間でどのようなやりとりをしてきたかなどは把握できるが、企業の商品やサービスを使い顧客がどう感じたかは把握できない。その顧客やユーザーがどう感じたかのXデータ(eXperience Data)を管理するのが、Qualtricsなのだ。
そのためQualtricsにとっては、ERPだけでなくCRMに日々蓄積されるようなデータもOデータという位置づけになる。ERPやCRMのOデータとQualtricsで管理できるXデータを一緒にすることで、顧客体験で「良い感情」を持ってもらう。企業のCEOの8割ほどは、自社が素晴らしいサービスを提供していると考えている。一方で素晴らしいサービスだと感じている顧客は8%程度しかいないとの調査結果がある。「このギャップを埋めるのがQualtricsです」と熊代氏。