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新型コロナウイルスで今後企業に求められる対応とは(続) 【緊急寄稿・実践編】新型コロナウイルス第二フェーズで「企業がやるべきこと」

edited by Operation Online   2020/04/28 07:00

 新型コロナウイルスで求められる企業対応の緊急寄稿を掲載したのが1月末。その時点では楽観シナリオと悲観シナリオの両面からの検討を紹介した。数ヶ月を経た現在、残念ながら企業は後者の対応を余儀なくされている。社員のモニタリングやキャッシュフロー、従業員へのケアなどの課題は多い。BCP(事業継続プラン)やリスクコミュニケーションの考え方から、企業が今とるべき行動について、ニュートン・コンサルティングの勝俣良介氏が解説する。

はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について前回の寄稿から数ヶ月が経過しました。当時は国内での感染者は数人程度。今以上に先行きが不透明な段階で、5〜6月ごろに収束の兆しを見せる楽観的シナリオと、中国武漢のように都市封鎖が起きる悲観的シナリオの2つが考えられると述べました。残念ながら、現段階では後者に傾きつつあります。専門家の間では、1年では収束しないのではという声も出ています。しかし、私たちは手をこまねいてただ現状を見ているわけにはいきません。この状況下で、企業ができることは何でしょうか。今後何をどう想定してどのような手を打っていけばいいのでしょうか。

 本稿では、時間の経過とともに更新される可能性がある細かい数値等には触れず、起きている事象の本質的・普遍的な側面にスポットライトを当て、企業が今、そして今後とるべき対応について解説していきたいと思います。

これまでにわかってきたこと

 はじめに、これまでに明らかになっている事柄について簡単にまとめておきます。

  • 感染力が高い
    COVID-19の感染力は、季節性インフルエンザのそれよりも高いと言われています。日本国内でも様々な対策がとられてきましたが、それでも感染者が毎日増えています。このことからも感染力が高いことは容易に想像がつきます。もちろん、まだワクチンが開発されていないことも感染拡大に拍車をかけています。なお、感染源としては飛沫感染(感染者のくしゃみ、咳、唾液などの飛沫に含まれるウイルスを他者が口や鼻などから吸い込んで感染すること)または接触感染(感染者がウイルスのついた手で物を触り、それを他の人が触り、その手で目や口や鼻を触ることで粘膜から感染すること)が主であるため、「密閉・密集・密接の3密を避けることが重要である」と強く叫ばれているのはご承知のとおりです。

  • 元気な人でも亡くなる恐れがある
    COVID-19は、感染者の中でも高齢者や基礎疾患のある方で特に致死率が高いと言われています。その傾向は季節性インフルエンザも同じですが、そもそもCOVID-19は季節性インフルエンザとは異なり、治療薬がまだ見つかっていません[1] 。そして何よりも、季節性インフルエンザでは重症化したり亡くなったりすることのない元気な人でも、一気に肺炎になり重症化する恐れがあるということがわかっています。20代〜30代でも感染すると500人に一人、40代ではその倍が亡くなっているとの報告もあります[2]。

  • 社会が通常の状態に戻るにはまだ相当かかる
    「社会が通常に戻るにはまだ相当かかる」と考えるべき合理的理由が下記のとおり揃っています。
    –「徹底した対策をとり、対応に成功している」と謳う国でも、いまだ通常からはほど遠い状態である
    – 過去の歴史から、大流行の波が複数回くる可能性がある
    – ワクチン開発には、どんなに早くても18ヶ月かかると言われている

 中国は、最初に感染爆発が起きた国ですが、強力な統制をきかせやすい国家体制であることも手伝って、徹底した対策が大きな効果を発揮していると言われています。これにより感染者数の増加傾向に歯止めがかかり、通常機能を取り戻しつつあるという報道もあります。これに希望を見出したいところですが、中国の増加傾向が緩やかになったとは言え、今でも感染者が増えていることに変わりはありませんし、ビジネスもその多くがいまだ正常にはほど遠い状況です。

 また、過去の歴史に学ぶという観点から、1918年から1919年にかけて大流行の波を3回発生させたスペイン風邪がよく引き合いに出されます。COVID-19がここまで世界中に蔓延し、暑さなどによって自然消滅する理由が見つからない現段階においては、スペイン風邪の時同様、第二波・三波が来てもおかしくないと言えるでしょう。

 最後に、通常機能を取り戻すのに一番大切なワクチン開発には、現代の医療技術をもってしても、運が良くて18ヶ月(通常はもっと)かかると言われています。これらを総合的に勘案すると、どう考えても今のような厳しい状況が、最低でも数ヶ月から半年、長くて1年から2年近く続く可能性があります。

[1]米ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」や富士フイルム富山化学の「アビガン」、帝人ファーマの「オルベスコ」など、有効ではないかと思われる治療薬が既にいくつか見つかっていますが、まだ検証中です

[2]2月11日時点での中国武漢での統計による。CDCWeekly “Vital Surveillances: The Epidemiological Characteristics of an Outbreak of 2019 Novel Coronavirus Diseases (COVID-19) — China, 2020” Table 1 参照”

企業が考えるべき“これから”の整理の仕方

 企業としては、専門家がまことしやかに言っていることを盲目的に受け入れたりするのではなく、かと言って、むやみやたらに対策を考えるのではなく、今一度状況を整理して、落ち着いて考えることが肝要です。そうすれば以下に示すように全体を俯瞰して捉えることができ、自ずとやるべきことが見えてきます。

感染症蔓延期における企業の今とこれからの対策を考えるフレームワーク (ニュートンコンサルティング)

感染症蔓延期における企業の今とこれからの対策を考えるフレームワーク (ニュートン・コンサルティング)

 まず、「これまでにわかってきたこと」を踏まえ、今後を3つのフェーズに分けて考えるといいでしょう。第一はここ数ヶ月の言わば“厳しい状態”のフェーズ。第二は感染者の増加傾向に歯止めがかかり、厳しい規制がやや緩和されるフェーズ。これは、十分な治療薬が確保されたり、ワクチン開発に目処がついたりするなど本格的な回復への希望・兆しが見えるまで続くものと思われます。このフェーズが最も不確実性の高いフェーズであり、一瞬で終わるのか、あるいは1年以上続くのかはわかりません。第二フェーズについては次の4つのシナリオが考えられます。

【第二フェーズに想定される複数のシナリオ(例)】

シナリオ種別 シナリオ概要
超悲観的 今のままの制約状態が半年から1年以上続く
悲観的 5〜6月ごろに緊急事態宣言が解除 一定の条件下(業務形態を変えたり、業務内容を縮小したりした形)での事業継続が許容される 次の波が来て再び緊急事態宣言が出される。この波を半年から1年半以上繰り返す
楽観的 半年〜1年半かけて社会的許容度が増し、徐々に上向いていく
超楽観的 (何らかの理由により)一気に好転し終わる

 そして最後、第三フェーズは本格的な復旧に向けた回復フェーズです。これら3つのフェーズに対して、企業のBCPの課題を設定します。なお、BCPとは事業継続計画とも呼ばれ、今回のような事態により企業の重要事業が中断した(またはしそうになった)ときに経営の考えるスピード・程度感で事業を継続・再開・復旧させるための備えのことです。具体的にはこうした「備え」を整えるにあたり、「今しておかなければならないこと」、そして「今後を想定し手を打っていかなければいけないこと」です。「今後を想定し手を打っていかなければいけないこと」についてはさらに短期と中長期の時間軸で考えることが重要です。

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著者プロフィール

  • 勝俣 良介 (カツマタ リョウスケ)

    ニュートン・コンサルティング株式会社 取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント 早稲田大学卒。オックスフォード大学経営学修士(MBA) 日本にてITセキュリティスペシャリストとして活躍後、2001年に渡英しNEWTONITへ入社。欧州向けセキュリティソリューション部門を立ち上げ、部門長としてISMSの構築をはじめとしたセキュリティビジネスを軌道に乗せた。 2006年、副島と共にニュートン・コンサルティングを立ち上げ、取締役副社長に就任。自社サービスの品質管理、新規ソリューション開発を率いる。コンサルタントとしても、その柔軟且つ的確なコンサルティング手法には定評があり、幅広い業界/規模のお客様に支持されている。全社的リスクマネジメント(ERM)、BCP・危機管理、ISO、コーポレートガバナンス、ITガバナンス、JS0X対応、セキュリティ対応など幅広いコンサルティングスキルを有する。 著書『世界一わかりやすいリスクマネジメント』『ISO22301徹底解説−BCP・BCMSの構築・運用から認証取得まで』

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