アフター&ウィズコロナの時代に「都市」のあり方が問われている
新型コロナウイルスの感染拡大以降、都市をめぐる問題が浮上しています。これまで当たり前のように存在した通勤ラッシュや大規模な集客を前提とした商業施設、過密するオフィス空間などが、パンデミック状況の中で停止を余儀なくされるという事態に直面しています。こうした状況は、これからの時代に、都市と社会はどうあるべきかという問題を私たちにつきつけています。
これらの問題に、以前から取り組んできたのが、東京都市大学の都市開発研究機構の研究グループです。彼らによる今後の都市のあり方をめぐる論稿を集めた本が、この春出版された『都市5.0』です。発行はコロナの問題が起きる直前でしたが、コロナ後の社会と都市をめぐる議論を深めるための、重要な問題提起が含まれています。
交通インフラ、建築、公共空間、コミュニティ、データ分析など各分野の専門家の共同執筆によるものですが、取りまとめた編著者は、東京都市大学教授の葉村真樹さん。10年以上に渡って、グーグル、ツィッター、LINEなどのインターネットテクノロジーで経営企画や各社の新規事業企画に携わってきて、現在は同大学の未来都市研究機構の機構長を務め、都市の未来における産学連携の研究をおこなうとともに、現在では、戦略コンサルティングファームのコンサルタントでもあります。
この本では、IoTやAIなどのデータと解析技術(Data & Analytics)がもたらすテクノロジー面での進化だけでなく、都市におけるあらゆるサービスや社会システム、また物理的な都市そのものを人間中心で設計する(Human-Centric Design)を主軸にすえています。
本書のタイトルでもある「都市5.0」とは、都市の発展の5段階に基づいています。その都市の5段階とは、50年以上前に建築家の黒川紀章氏が提唱した、1)神の都市、2)王の都市、3)商人の都市、4)法人の都市、5)個人の都市という考え方に基づいています。そして現在の都市は、企業の経済行為を中心にした「法人の都市」であり、今後の都市は、デジタルテクノロジーを活用しながらも人間中心の「個人の都市」の姿に向かうべきだというのが本書の主題です。
そして、IoTやAIなどのデータアナリティクス技術とヒューマン・セントリック・デザイン=人間中心設計の掛け合わせによって、黒川氏の言う「個人の都市」を実現するための「アーバン・デジタル・トランスフォーメーション(UDX)」を、著者の葉村さんは提唱しています。
今回は本書の序章部分を抜粋して紹介します。都市の発展の段階と、アーバン・デジタルトランスフォーメーションについて、最前線で思考してきた著者の葉村さんの考え方を、ぜひ参考にしてみてください(抜粋部分は次ページで読むことができます)。