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コロナ禍でも安定供給を実現、モンテールを支えた情報システムの対応とは?

edited by Security Online   2020/08/26 11:00

 新型コロナウイルス感染症により、企業の多くが業務のやり方を変化せざるを得ない状況に陥った。そんな中、チルドデザート大手のモンテールは通常通り店頭に商品を届けることができた。安定供給の背景には、事前に敷いていたBCP(事業継続計画)などシステム側の準備があったからに他ならない。モンテールで情報システムを担当する大山英治氏(モンテール 総務部情報システム課マネージャー)が日本ヒューレット・パッカードのWebセミナーに登場し、緊急事態宣言などのコロナ禍をどう乗り切ったかをシステムの面から語った。

コロナ禍でも安定稼働ーー365日商品を届けるモンテールのシステム

 スーパー・コンビニに並ぶシュークリームやエクレアで知られるモンテールは、昭和29年(1954年)創業、チルドデザートの草分け的存在だ。2019年の売上高は264億円、埼玉に本社をもち、製造工場は茨城、岐阜、岡山の3箇所。40品目以上の自社ブランド商品を製造している。

 モンテールのチルドデザートは毎日店舗に配送される日配食品に分類される。取引先から発注を受けるとその日のうちに製造・出荷し、取引先の配送センターに届くという流れで、「工場は365日稼働している」と大山氏。コロナ禍も同じように工場は稼働した。むしろ、巣ごもり消費により、スーパー・コンビニは軒並み需要が増加したため、モンテールも例年と比べて受注が多くなったという。

 これらを支えているのがモンテールの情報システムだ。オンプレミスでは、受注管理、生産管理、出荷管理、売上管理などを含む「基幹システム」、原材料規格と配合データなどを管理する「商品企画情報システム」、そして売り上げ分析のための「BIツール」、受発注で重要になる企業間取引データ交換の「EDIサブシステム」などを持つ。これに、グループウェア、メール、業界特有のスーパーの冷蔵ショーケースなど縦割り支援システムなどでクラウドを利用するハイブリッドな環境を持つ。

 インフラも自社管理しており、ファイルサーバー、ADサーバーなどを本社でオンプレミスとして持ち、セキュアVPN経由でデータセンターや製造工場などと連携している。これら全てを、大山氏を含む6人の情報システム部門がサポートする。1人は専属のプログラマとして作業し、5人が運用サポート、保守、開発を担当するという体制だ。

 コロナ禍でも原材料の仕入れは通常通り。衛生管理についても、新型インフルエンザなどで蓄積してきた感染症対策がうまく機能したという。事務職や営業職については、できる範囲で在宅勤務を推進したそうだ。これらの取り組みにより、コロナ禍においても通常通りの供給を可能にした。

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テレワーク、受発注業務ーー業務を止めない取り組み

 情報システム部門は、コロナ禍でどのような支援をしたのだろうか。いくつかの取り組みの中でも肝となったのが「業務を止めないための対応」、具体的には「受発注業務の対応」「テレワークインフラの整備」「インフラの遠隔保守」の3つがある。

 受発注については、BCPを策定していたことが役に立ったようだ。モンテールでは機能が本社に集約されているが、令和元年の東日本台風などもあり、本社に出社しなくても受注業務がある程度進められるようなプランを立てていたという。「事務所に出勤しないと受注が受けられないため、今回は茨城の工場の会議室を急遽事務所に変更して分散して受注対応する仕組みを構築しました」と大山氏は振り返る。

 本社で開いていた月例の会議も、ちょうど2019年にWeb会議を導入したタイミングだった。Web会議に慣れ始めたところでの今回のコロナ禍はむしろ追い風となり、「Web会議システムの浸透がかなり進みました」と大山氏。春は採用活動の時期でもあり、急遽機器を揃えることでWeb面接も実現したそうだ。

 テレワークインフラの整備についても、営業職向けに用意していたVPN回線を活用することで対処した。しかし、緊急事態宣言下では商品企画、販売管理(販管)などの部門も可能な限り在宅勤務になったため、準備していたVPNセッション数では足りない。

 そこで、VPNを使って業務を進めなければならない部門から優先的に使い、それ以外はVPNを使い終わったら切断するという運用を決定、これを「トップダウンで命じてもらうことで、混乱なく在宅勤務にシフトできました」という。その結果、BCPの下でバックアップのVPN用のポートを用意していたが、「結局使わずに済みました」と大山氏はいう。

HPEサーバーが可能にする遠隔保守

 情報システム部も、車で通勤できない人は在宅勤務に切り替わった。ここで大山氏らが活用したのがHPEサーバーが搭載する「iLO(Integrated Lights-Out)」だ。

 モンテールでは、2018年から段階的に基幹システムの再構築を進めている。その一環として、レシピなど機密情報が入る商品情報管理システムでは、インテル Xeonプロセッサーを搭載した最新世代の「HPE DL360 Gen10」を採用している。第2世代のインテル Xeonスケーラブル・プロセッサー(※)はハードウェア支援型セキュリティ、画期的なメモリー技術などの特徴により、性能やセキュリティに優れる。DL360 Gen10は2基搭載が可能で、さらにHPE独自のセキュリティ技術や最適化機能も加わっている。

※第2世代インテル Xeonスケーラブル・プロセッサーは、ハードウェア支援型セキュリティ機能を実装。画期的なインテル Optane パーシステント・メモリーのサポートに加え、セキュリティに優れている。インテル DL ブーストにも対応し、AI推論を最大30倍高速化し、投資効果を最大化する。

 「インフラはハードウェアが絡むので通常、在宅勤務は難しいのですが、iLOによりサーバーにリモートで入ることができるので、在宅からの保守ができます」と大山氏。ちょうどインフラ担当者が在宅勤務の日にサーバーの電源の片系統が故障するというアクシデントが発生したが、その際も修理の後にインフラ担当が遠隔からステータス確認をして安心することができた、と明かした。

 サーバー運用管理ではiLOに加えて、無償のAI型監視ソリューション「HPE InfoSight for servers」も組み合わせている。モンテールでは導入したばかりだが、「運用管理を一歩進めることができる」というのは、HPEでハイブリッドIT製品統括本部カテゴリーマネージャーを務める阿部敬則氏だ。

 「障害を検出すると、InfoSightから登録した担当者にメールが送られる。iLOチップがクラウド側にあるInfoSightに詳細なログ情報などを定期的に送信してくれているため、担当者はケースを作成してHPEに対応を依頼するかどうかさえ判断すればよくなります」という。ケースを作成すればすぐにHPEが対応してくれる。「人手がかからない運用管理が可能になります」と阿部氏。さらには、クラウドとAIという特徴により、常に世界中から収集しているデータから傾向性を学び、通知する情報精度が進化していくという。

 大山氏も「まだ稼働を始めたばかりだが、万が一が起きる前に予兆検知して先の手が打てる、あるいは起きてしまってもすぐに対応できることが良いと考えている」と期待を寄せた。

 これに加えて、コロナ対応を優先させたために進捗が遅れていた基幹システムの再構築プロジェクトでも、Web会議システムを使ってベンダー各社からの提案を受け、選定を終えた。「プロジェクトをキックオフさせることができました」と大山氏。またOSに関しては、最新のWindows Server 2019を導入。OSからHPE Gen10サーバーの強みであるハードウェアセキュリティまで、最新のセキュアな環境を実現している。

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「なくならない」FAX対応、RPA導入などが今後の課題

 3月以降、新型コロナの感染動向と政府の緊急事態宣言の発令・解除と予測が難しい状況の変化に合わせて対応してきたモンテール。BCPを敷いていたことで、業務への支障は少なく、巣ごもり消費の需要増にも対応できた。

 この数ヶ月から見えてきた今後の課題に関して、大山氏が最初に挙げたのが、一部の取引先が発注の際に利用する「なくならない業務」であるFAXだ。

 FAXで送られる受注は全て本社に集まる仕組みになっているが、この仕組みはリスクもある。それまでは、BCPとしてFAXは丸ごと転送することを考えていたが、分散業務という点から本社にしかFAXが届かない仕組みを見直す必要がでてきた。そこで、「FAXの情報を電子化して、どこからでも確認できる対応をしていきたい」と大山氏。「BCPの漏れを発見できたことは重要だった」と続ける。

 この他、企業間の商取引を電子化するWebEDIのRPA化による受注の自動化、テレワークを前提としたセキュリティの見直しなどもあげた。

 大山氏は最後に、「基幹システムのプロジェクトがスタートしたところで、これを進めながらこれからのニューノーマルに向けた働きやすい環境づくり、業務を止めないための環境面での工夫をシステムとして導入していきたい」と展望を語った。

 ※本記事に関する動画は以下のサイトから視聴できます。

【開催済|7/22オンデマンド動画】実例に学ぶBCP「成功企業に学ぶ2020年代の企業ITのニューノーマル」 ~安定供給を維持したモンテールは何を準備していたのか~

HPEは翔泳社が9月18日に開催するイベント「Security Online Day(セキュリティオンラインデイ)」で『新しいデジタル世界でのサイバー被害対策とは インフラレベルのセキュリティと最適なサイバー保険を入手するには』と題した講演を行ないます。ぜひご参加ください。参加申し込みはこちらから。

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著者プロフィール

  • 末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

    フリーランスライター。二児の母。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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