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週刊DBオンライン 谷川耕一

コロナで窮地のホテル業界をクラウドで救え!マンダリン・オリエンタルがインフォアを導入した理由

 コロナで窮地に陥るホテル業界。デジタルの力でこの窮地を脱することは可能か? マンダリン・オリエンタル・ホテルグループは、インフォア(Infor)のソリューションを導入。その担当者にアフターコロナのホテル業界のデジタルへの取り組みついて聞いた。

 人の移動に関連するビジネスは、新型コロナウイルスのパンデミックの大きな影響を受けている。航空会社は国際線の減便が続き、先行きが見通せない。国内では「GoToキャンペーン」が始まりホテルなど宿泊施設は回復の兆しもあるが、ビジネスがコロナ以前に戻れるかは未知数だ。

 業界特化のクラウドソリューションを提供するインフォア(以下、Infor)は、ホテルなど宿泊業のビジネスをサポートする「Infor CloudSuite Hospitality Management Solution(Infor HMS)」を提供している。

 このInfor HMSで、厳しいビジネス環境にあるホテルなどの宿泊業のビジネスをどのようにサポートできるのか。グローバルでInfor HMSを導入しているマンダリン・オリエンタル・ホテルグループのIT担当 バイスプレジデント トッド・ウッド氏、Inforのアジアパシフィック地域でInfor HMS製品を担当するバイスプレジデントのエリック・ウォング氏に話を訊いた。

グローバルで統一したホテル資産管理で今後のビジネス成長を支援

マンダリン・オリエンタル・ホテルグループ IT担当 バイスプレジデント トッド・ウッド氏

――マンダリン・オリエンタル・ホテルグループ(MOHG)でInfor HMSを導入した背景について教えてください。

ウッド氏:MOHGにとってInfor HMSの導入は、ITシステム変革の大きなプロジェクトであり、組織のあり方を根本的に変えるものでした。以前のシステムは、導入した際には新しくて良いものでしたが、時間の経過とともに陳腐化していました。一方でMOHGは買収などもあり成長し変化もあり、自分たちの変化に対応しつつさらに市場ニーズに合った新しいサービスを地域ごとに提供する必要もありました。それらに対応できる新しいITシステムが欲しかったのです。

 技術面のニーズとしては、新たなサイバーリスクにも対応する必要がありました。また、今後のビジネス拡大に対応できる拡張性も必要です。また、MOHGにはどんどん若い世代のスタッフが増えており、彼らはスマートフォンなどを使いこなしています。彼らが直感的に活用できるツールも欲しい。スタッフをITでサポートして、スタッフがゲストにより高いホスピタリティを提供できるようにしたかったのです。

――新たなシステムにはどのような要件がありましたか?

ウッド氏:オンプレミスベースの旧システムは、地域ごとに異なるものが動いていました。中にはグローバルスタンダードに合わないものもあり、それらをグローバルで統合化できる仕組みが必要でした。またIT部門スタッフの負担を減らすため、クラウドであることも重要視しました。旧システムは周辺システムやサービスとのインターフェイスも不十分でした。たとえば客室で利用するメッセージングや照明調整のシステムがあり、それらとの連携は自分たちてで手間をかけ開発が必要だったのです。求めていたのはグローバル規模で利用でき、我々の今後の成長を継続的にサポートしてくれるものでした。

――Inforのソリューションを選択したのはなぜですか。

ウッド氏:広範な選定のプロセスを経て、Inforに決めました。要件を細かくリストアップし、ホテル業界の他の企業などからも情報を収集して、10のサプライヤーから選びました。要件をまとめるために、グループ内でスタッフ100名ほどにインタビューもしています。その上で経営層も含む部署横断のリーダーシップチームを編成し、そこで10のサプライヤーを5つまで絞り込みました。5社とは1社あたり4時間ほどのプレゼンテーションと情報交換の機会を持ちました。

 当初は他を推してた人もいましたが、結果的には選定チーム全員一致でInforを選びました。プレゼンテーションやデモが良かったこともありますが、我々からの質問への回答、パートナーシップ精神が我々と一致したことが大きな違いでした。MOHGではゲストに対しできる限りのサービスを提供します。それと同じものを我々はパートナーにも求めます。それがInforにはあったのです。導入開始から2年ほど経過していますが、Inforは我々に対し最大限のリスペクトで接してくれています。

――Infor HMSの導入プロジェクトはどのように進んでいますか。

ウッド氏:最初の9ヶ月は、スモールチームを作りInforのシステムの理解から始めました。そこからしっかりした枠組みを作り、どういう使い方をしていくかを見極めます。その後、パイロットで新たにオープンするワシントンDCのホテルに導入します。続いてドバイ、ドーハ、北京と新規開業ホテルから展開しました。今は既存のホテルも移行しています。新型コロナウイルスの影響で移行のために現地に行けなくなったところもありますが、東京、ミラノ、サンチアゴにはコロナ前に現地に赴き無事移行できました。

――Infor HMSは具体的にどのように利用していますか。

ウッド氏:Infor HMSは、予約や客室管理など全てのホテル資産管理の基となるシステムです。以前はバックオフィスの会計システムのプロセスには紙の書類も多かったのですが、Infor HMSを導入してそれがなくなりました。もっとも大事なゲストサービスでも、紙が減りゲストとのやり取りが効率化しています。Infor HMSには”Stay360”という画面があり、ここにゲストに関するさまざまな情報が集まります。ゲストが到着した際にスタッフが知っておくべき情報は、全てここに集まっています。ゲストの体験も変わっており、たとえば今ではチェックイン時にはiPad上でサインします。またチェックイン時にフロントを通らずに、部屋に直接案内することもできます。

 システムは使い勝手が良く、直感的で理解しやすいためにトレーニング時間も短くて済みました。使うのに手間がかからないので、その分スタッフの時間は顧客サービスに充てられるのです。もう1つ、他システムと連携部分も安定しているのは良いところです。ここが不安定だと、鍵や部屋の照明管理など顧客サービスにも影響が出てしまうからです。

――利用しているスタッフの反応は?

ウッド氏:スタッフからは以前より簡単で使いやすいとの声があります。紙の書類がなくなった点も評価されています。フロント業務がiPadでできる点は、若いスタッフから好評です。バックオフィスでは、以前のシステムは夜間バッチの際にシステムを止める必要があったけれど、それがなくなりかなり便利になったとのことです。アップデートなどの作業はクラウドで自動化されており、IT部門の運用管理負担が大きく軽減されています。

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グローバル標準の機能とローカライズ機能を明確に分け迅速に対処

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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