情報提供サイトの統合で「1to1エンゲージメント」を強化
アクイアは、オープンソースソフトウェアのCMS(Contents Management System)である「Drupal」の開発者が、米国ボストンで2007年に創業。Drupalが多くの企業で利用される際に必要なサポートサービスを提供するために生まれた企業だ。世界中に4,000社の顧客があり、日本法人は2018年12月に設立、既に国内大手企業など40社以上で利用されている。アクイアでは、Webサイトのホスティングに利用される「Drupal Cloud」、マーケティングオートメーションやCustomer Data Platformなどを実現する「Marketing Cloud」という2つのサービスを展開している。
現状、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、企業を取り巻くビジネス環境は大きく変化し人々の生活も変わった。パンデミック以前は、“デジタルシフトでデジタル化への大きな投資をする”とした企業は、米マッキンゼー社の調査では8%程しかなかった。それが昨年4月には、「73%の会社がDX無しには生き残れないと考えており、強化や投資をしなければとの意識が生まれています」と石井氏。コロナ禍以降、DXの大きな波が来ていると指摘する。
実際、これまでデジタル化を推進しWebサイトでの情報発信やマーケティングオートメーションなどに投資していたのは、IT企業やEコマースを展開する企業が中心だった。コロナ禍以降は、エンドユーザー企業の多くがこれらに取り組んでおり、「全産業のあらゆる規模の企業から、アクイアには相談が寄せられている」という。
同社ではオンライン化やデジタル化は引き続き加速するが、その上でワクチン接種などが進めば対面接客や訪問営業などのオフラインに戻る部分もあると考えている。つまり企業は、オンラインとオフライン両方の活動と投資が求められる「ハイブリッド化」に対応しなければならない。既に、そういった企業の声がアクイアには届いていると石井氏は言う。
ハイブリッド化への先進的な取り組みとして、米国ニューヨーク州でCOVID-19に対応したWebサイトを「Acquia Digital Experience Platform」を使い3日間で構築した例が紹介された。600万人のユーザーに対し、4,900万のサービスインタラクションと3億4,200万のページビューに耐えられる環境を整えた。この例ではすべての作業がオンラインで済んでいるわけではなく、実際にワクチン接種をするのはオフラインであり、オンライン/オフライン双方のサポートをアクイアのプラットフォームで実現している。
米国で最も歴史のある製粉会社キング・アーサー・ベイキングカンパニーでは、小麦粉などパン作りに必要な製品を販売してきた。コロナ禍の巣ごもり需要では、多くの人が自宅でパン作りをするようになった。そこで同社は、Webサイトにプロによるパン作りのレシピ情報を掲載。その結果、劇的にWebサイトへのアクセス数が伸び、セッション数が260%上昇、前年比売り上げも200%の増加を実現している。これを支えたのが、アクイアのWebプラットフォームだ。タイムリーにコンテンツを充実させられたことで、コロナ禍の厳しいビジネス環境下でも製品売り上げの向上につながったという。
北米のスポーツ衣料販売企業であるlululemonでは、オンラインとオフラインのデータを統合し、全体的な顧客の洞察を得て、関連性の高い体顧客験を提供するために「Acquia Customer Data Platform(CDP)」を採用している。オンラインと、店舗などのオフラインの顧客情報をCDPで統合し最適化したことで、サイト訪問は50%増加した。さらに店舗では、顧客がいつ何を買ったかの情報がレジ画面ですぐに見られるようになったという。これにより、たとえば一年前にスポーツウェアを購入した顧客にレジで使い心地を尋ね、アップセルの提案をするといったことが可能となっている。これは、ハイブリッドでの1to1のエンゲージメント強化が実現した例といえる。
欧米と日本におけるDX課題の差異
ハイブリッドな取り組みが進んでいる欧米と日本では、どのような違いがあるのか。日本の顧客と接して感じるDXの取り組みの課題としては、コーポレートサイトと各事業部が展開するマーケティングサイトなどが挙げられる。グローバル企業なら各国のサイトも別途運用しているケースも多いが、日本では企業内でWebサイトが乱立してしまっているという。その結果、管理者や管理部署も乱立し、作業も増加。そのため本社で自社サイトの情報発信のガバナンスが効かず、関係者や委託先が多いため意思決定に時間がかかる。また、関わるベンダーも多くなることで全体コストの把握が難しくなり、コストが適切かもわからない状況も生まれている。
また、Webサイトを更新できるエンジニアが不足、あるいはいないという問題もある。委託先に連絡し更新する内容を都度確認する作業が発生するため、タイムリーな情報更新ができない。さらに、自社内にデジタル化して情報を活用するためのノウハウの蓄積が難しいという問題も発生している。これらは経営的に見れば、時間と人件費の把握ができずコストが不透明となり、企業イメージの一貫した管理もできないことにもなる。結果的に、企業業績や従業員の満足度にも影響を与えかねないと石井氏は指摘する。
こうした日本企業における課題は、「コミュニケーションのデジタル化の遅れ」「オフラインとオンラインを統合化するためのデータマネジメントの必要性」という2つに分けられる。前者には、市場投入時間の短縮、Webサイトでの受発注基盤の構築、社内コミュニケーションポータルの一元化などで対処する。これには、アクイアからデジタル基盤構築の高速化の提案ができる。後者には、あらゆる顧客データの統合、データ活用による営業活動の効率化で対処することとなり、データ活用マネジメントを実現する提案で解決することとなる。
既にアクイアのソリューションで、これらの課題解決に取り組んでいるのが日本航空だ。日本航空ではイントラネットに様々なサイトがあり、従業員がどの情報をどのサイトに行けば得られるかがわかり難かった。そこでアクイアのサービスを用い、情報提供サイトを一本化し業務の効率化を実現。DXは大きな概念で何から始めていいかわかり難いが、最初の1歩は「企業負荷を減らすことだと考えています」と石井氏。日本航空の例を見てもそうだが、従業員の負担を減らさないと顧客に余裕を持ったおもてなしやサービスは提供し難いものがあるともいう。
ハイブリッド化に対応した“DXのための顧客接点強化”を段階的に実現
アクイアが最も価値を提供できるのが、企業内などに数多くあるサイトをまとめられることだ。アクイアは、100%クラウドのシステムを使いインフラ管理工数を削減、プラットフォームを集約して一元管理を実現できる。「ゆるい中央集権という言葉をよく使うのですが、本社で管理すべきところはしっかり本社で、各拠点などで管理したほうが会社として動きやすいところは、承認システムなどを使い責任区分を分けて管理できます」と石井氏。プラットフォームを統一化すれば、ユーザーやトラフィックの情報も一本化され、企業全体として顧客の動きの見える化もしやすくなるという。
これらに既に取り組んでいるならば、次のステップでは顧客接点の統合と可視化を行う。コロナ禍が過ぎればやがてはオフラインでの接客なども戻り、ハイブリッド化への対応が求められる。これに対処するには、単に情報をまとめるのではなく、情報の入り口をまとめる必要がある。Webサイトやアプリケーション、メールマガジンなどのオンラインもあれば、名刺交換や展示会でのアンケートなどオフラインで入ってくる顧客情報もある。これらをバラバラに管理していると、名刺情報が埋もれたり、個人に帰属し共有できなかったりするだろう。アクイアなら、オンライン/オフラインから入ってくる顧客情報も容易にまとめられる。
さらに、オンラインはWebサイトだけでなく、FacebookやInstagram、LINEなどのSNS、Eメールやデジタルサイネージ、音声を使うオーディブルデバイスなど様々なものがある。コンテンツの出し先も多様化しており、それらにコンテンツを効率的に配信、管理することも、アクイアなら可能である。
アクイアのサービスは、国内大手パートナー企業から提供できるので、身近のパートナーに是非相談して欲しいと石井氏。アクイアでは、顧客コミュニケーションの見直しと収益改善のための“DXのステップ”を提案し、実施している。CMSの導入によるオンライン顧客接点の強化から、マーケティングオートメーションを使った1to1メッセージの実現、さらにはコンテンツのパーソナライズや顧客情報基盤の構築など、ステップを踏み段階的に実現できるようサポートしていると言いセッションを締めくくった。
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米GARTNER(ガートナー)社発表、2021年版 MAGIC QUADRANT FOR DXP にて
アクイアが「リーダー」に選出
米Gartner(ガートナー)社から発行されるマジック・クアドラントでアクイアがリーダーに選出されました。この評価は、同社のビジョンの全体的な完全性と実行能力を分析した特定の基準に基づいています。