GAFAだけじゃない! 非テクノロジー企業にも浸透
2022年9月、世界のトップビジネススークールの1つであるスイスの経営大学院「国際経営開発研究所(IMD)」は「世界デジタル競争力ランキング」の2022年版を発表し、日本は63ヵ国・地域中、29位と過去最低となった。日本は、4年連続で順位が低下しており、先進国では最下位という状況である。特に、「デジタル/ITリテラシーを有した人材層の厚さ」や「ビッグデータの活用」などは、63ヵ国中最下位レベルで非常に難しい結果だった。
一方で、世界では「データとAI」を活用した、競争力の強化やイノベーションの促進が、凄まじいスピードで進んでる。高精度な需要予測により、機会損失、余剰在庫、カーボンフットプリントを削減しているのだ。また、センサーデータのリアルタイム分析による予知保全で機器のダウンタイム削減や耐用年数の延長を実現している。さらに、ユーザーごとにカスタマイズされた情報を提示するパーソナライゼーションや、ユーザーの嗜好に合わせた推奨を最適なタイミングで提示することで、ロイヤルティやARPU(Average Revenue Per User:1ユーザーあたりの売上金額)が向上するなど、枚挙にいとまがない。
数年前までは、これらのような「データとAI」の積極活用による恩恵は、「GAFA」のような巨大なテクノロジー企業が享受していた。ところが、様々なテクノロジーの普及や、企業や組織が「データとAI」に投資を本格化する流れを受けて、企業規模や業種・業態に関わらず、非テクノロジー企業にも浸透し始めているのだ。
ここで重要になってくるのが、我々データブリックスが考える「データとAIの成熟度曲線」である(図1参照)。x軸の「データ&AI 成熟度」に比例して、y軸の「競争優位性」が向上する格好だ。これまでのデータ活用は、BIツールなどを活用した過去事象の分析、すなわち過去に起こった事象に対する分析が中心だった。
これからはAIを活用した未来志向的な分析を推進することで、過去事象を踏まえた上で、最適な対応策の立案や、そのプロセス自体の自動化も可能となる。特に、パンデミックやロシアによるウクライナ侵攻、急激なインフレ、中国のゼロコロナ政策による物流の混乱等、政治的や経済的に不確実性が頂点に達している今日の経営環境では、AI/機械学習技術を活かし、人智が及ばない示唆を得ることは、非常に有効だ。
しかしながら、このAIの世界とBIの世界をシームレスにつなげ、「データとAI」の成熟度を向上するには、「データ統合と一元管理」と「AIの活用」の2つの段階があり、それぞれの段階において、解決すべき問題が様々ある(図2参照)。
数百を超えるデータプロフェッショナル人員を抱えるGAFAを代表する巨大テクノロジー企業は、自社のみでこれらの課題に対応できるが、非テクノロジー企業は同様のアプローチは極めて難しいと言わざるを得ない。これらの課題を解決するために、「レイクハウス」という次世代のデータ基盤アーキテクチャーが注目を集めている。「レイクハウス」の詳細や優位性に関しては次回で説明するとして、ここからは「レイクハウス」を活用しているリーディング企業の事例を紹介したい。