IT大手に入社するも購買に配属、本流から外れた寂しさも
NTTデータグループのデータマネジメントの専門会社として設立した前身のリアライズから社名を変更し、新たなスタートを切ったNTTデータ バリュー・エンジニア社長の大西浩史氏。その「データマネジメント」に対する、情熱は同氏の原体験に基づくものだ。1994年にNTTデータに入社。当時は花形のIT業界への入社で心躍らせたものの、配属されたのは「購買部門」だった。そこから大西氏の、データとの関わりが始まる。
「入社するまでワープロも使った経験がなかったんです。プログラミング研修を受けた際にどうやら素質がないと判断されたらしく、購買部門に配属されました。IT企業といえばSEなどが花形のイメージだったので、その時はIT業界に身を置く者としての本流から外れたような寂しさがありました」
ソフトウェア勃興期で大物との交渉
しかし1年目からソフトウェアなどのサプライヤーとの交渉業務を担当し、実際に仕事をしてみると、その奥深さがすぐに分かった。NTTデータの社内使用分だけでなく、顧客企業へ納品するシステムのソフトウェアも購買部がまとめて購入しており、商談の規模は年間で数百億円にもなる。そのため少しでも単価を抑えられれば営業利益にダイレクトに貢献することができた。しかも当時はWindows95が普及したばかりの“ソフトウェアの勃興期”にあたり、最新のソフトを携えたベンダーが毎日のように訪ねてきたという。
「やりたいことを実現するために自ら動くアグレッシブな方が多かったですね。今では名前をあげると誰もが知るようなIT業界の大物の方々とも接することとなり、大いに刺激を受けました」
そして、自社だけでなく顧客企業に少しでも利となるように、販売会社を介さない直ルートを開拓したり、新しい事業者を加えて競争させたり、戦略的に合理化を推進していった。その中で、大西氏にとって強力な武器になったのが「データ活用」だった。
サプライヤーとの交渉から「データが武器」と気づく
サプライヤーとの交渉は、「ちょっと痛み分け」や「がんばって値引き」という曖昧で根拠のない、いわば属人的な判断で行なわれていた。さらに一式見積りだったこともあり、購入後は何がどのくらいの分量で、何割引きで購入されたかの情報すら無い状況だった。
「入社1、2年目の私にとって、交渉の武器は“相見積り”のみでした。そこで、それまで表記にばらつきのあったメーカー名や型番などを整理して、Excelで入力し、『どの事業部でどの型番の製品をどのくらい購入しているのか』を把握しようとしたわけです。すると、あるサプライヤーは事業部別で割引率を変えていたり、案件別では少量に見えても全体では大量に購入していたり、様々なことが見えてきました。まさに次の打ち手の輪郭が見えたように感じましたね。そして、データを元に交渉したところ、面白いように商談が進み、自信を持って臨めるようになりました」
それはまさに、「データが武器になる」と確信した瞬間だったという。しかし、データはもともと「業務を回すためのもの」であり、継続的にメンテナンスを行なわなければ、使えなくなってしまうことも実感した。データマネジメントは担当者1人が奮闘するだけでは難しい。組織や仕組みづくりから取り組む必要がある。そうした課題感を持っていた時に巡ってきたのが「社内ベンチャー制度」の募集だった。