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三菱電機がCRMをグローバル展開 推進のポイントとは──レガシー刷新でサプライチェーン最適化目指す

「TerraSkyDay 2023」講演レポート

 総合電機メーカーとして、家電製品から産業機器、宇宙システム、社会インフラまで幅広い事業を手掛ける三菱電機。ファクトリー・オートメーションを取り扱うFAシステム事業本部では、グローバルでの営業管理強化やシステムの標準化を目的に、グローバルCRM(顧客情報管理)プロジェクトを推進してきた。プロジェクトにおいて開発・CoE支援に携わったテラスカイとともに、グローバルCRMの概要および推進の際のポイント、そして今後の展望などが紹介された。

グローバルCRMの構築 三菱電機が注視したポイントとは

 三菱電機のインダストリー領域を担う「FAシステム事業本部」は、FA(Factory Automation)機器を幅広く取り扱っており、シーケンサー1200万台、サーバー1500万台、CNC(Computer Numerical Control:コンピューター数値制御)110万台の稼働数を誇り、多くの顧客を擁する。また、FAに係わるWebサイトの会員数90万人のうち約4割が国内、6割近くが中国やアジアを中心とした国外のユーザーであり、グローバルCRM(顧客情報管理)の構築は重要な課題となっていた。

 三菱電機 FAシステム事業本部 FADXプロジェクト FADX統括部 部長の永井道生氏は、「世界に多数の地域販社があり、CRMシステムは事業・地域ごとにスクラッチで開発・運用保守がなされていて連動もできず、とても非効率な状態でした。各地域販社が事業を拡大するにともない、情報共有や営業連携などが困難なためグローバルCRMが求められていたのです」と振り返り、「特に比率が高く、市場が拡大していた中国と韓国における新たなCRMシステム導入の動きがトリガーとなり、グローバルCRMへの機運が高まっていました」と背景を明かす。

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 これを機に、三菱電機では導入期間や運用保守工数の削減に加え、グローバルキーアカウントへの対応強化、新たな地域へのスムーズなCRM導入などを目的として、顧客情報をグローバルCRMシステム「三菱エレクトリック グローバルFA CRMプラットフォーム」を実現している。グローバルCRMではあるが構築の際には、各国・地域の商習慣や事情を考慮し、必要最小限なローカライズが施されているという。

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 なお、このグローバルCRMシステムの構築プロジェクトにおいて、2019年から参画しているのがテラスカイだ。開発支援だけでなく、CoEによる推進と持続的運用を目的としたガイドライン作成、組織運営を円滑に行うためのルール作りなどを支援。現在はCoEの一員として、グローバルに各国に展開するための組織横断的なルール策定などの継続的な支援が行われている

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 テラスカイ クラウドインテグレーション営業本部 執行役員 副本部長を務める足立直人氏は、「CRMのグローバル展開ともなると、様々な困難が生じることは想像に難くないです。プロジェクトをスムーズに推進するために留意すべきポイントはどこでしょうか」と問いかけると、1つ目のポイントとして「グローバル標準化」と「ローカライズ」の両立が挙げられると、永井氏は次のように解説した。

 まず、「グローバル標準化」については、グローバル顧客対応のための情報共有を実現するために、キーアカウントの情報共有、営業連携などのパイプラインをきちんとやり切ること。これに加えて、営業ステージの管理手法をしっかりと共通化させることが重要だと指摘する。たとえば、グローバル顧客情報というデータの機密性から閲覧権限などの整理が必須であり、方針をテラスカイと策定。Salesforceのプラットフォームに用意されている「トランスレーションワークベンチ」「マルチ通貨カスタム表示ラベル」などの機能を方針に従ってカスタマイズすることで情報共有を実現させた。

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 このとき、運用・保守コストの削減という観点からは、グローバルにおけるデファクトスタンダードともいえるSalesforceの採用が効果的だったという。サポート体制についても一元化しており、運用・保守の効率化も進めている。

 永井氏は「国内のサポートは関連会社に委ねられるが、グローバルとなると難しくなります。この点は、テラスカイにかなり調整していただきました」と述べると、足立氏は「グローバルでの運用、問い合わせ対応はすべて日本で行うという方針でしたが、それでは工数や時間が膨大にかかってしまいます。そこで組織運営に影響のない設定やカスタマイズを整理することで、各国関係者が対応するように調整を進めました」と説明。影響が大きいアクセスコントロールの変更などは、問い合わせ手順を明確にした上でテラスカイが担っている。

三菱電機 FAシステム事業本部 FADXプロジェクト FADX統括部 部長 永井道生氏
三菱電機 FAシステム事業本部 FADXプロジェクト FADX統括部 部長 永井道生氏
写真提供:テラスカイ

 また、標準化と両立させるべきだという「ローカライズ」については、「各地域ごとに商習慣や文化が異なることを鑑み、それぞれの要件を見極めた上で行うことが必要です。ただし、必要最小限のカスタマイズに留めることが重要です」と永井氏。たとえば、中国やインドは同僚同士でもオープンな情報共有が行われにくいため、上長に閲覧権限を与えて社内を統制するという方法を採っている。他にも地域毎に必要項目や管理の粒度などを調整したり、日本では個人情報保護の観点から詳細が見えない形にしたりと、様々な調整が行われたという。

 あくまでも策定したルールから逸脱しないような形で調整し、現地従業員の意思決定の下にローカライズを実施しており、現地の主体性を尊重することが大切だと強調した。

次のページ
全社CoEと事業部CoE システム運営効率化をどう進めた?

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

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