生成AIモデルの2つの活用アプローチ、独自モデルか他社モデルか
「ServiceNowのAI戦略は、既存あるいは新規のワークフローを『インテリジェントワークフロー』として機能させることだ」と、同社COOのCJデサイ氏は語る。顧客にインテリジェントワークフローを実現するプラットフォームを提供するため、ServiceNowは「生成AIモデル」「Now Assist」「ワークフロー」の3要素に注力。この戦略的アプローチにより、企業の業務プロセスにAIの力を効果的に組み込み、効率化と自動化を推進していく方針だ。
元々、生成AIモデルへのServiceNowのアプローチはユニークなものだ。同社は独自のモデル「Now AI」を持ちながらも、他社のモデルも使えるという柔軟性の提供に重きを置いている。2024年に入り、基盤モデルの世界は大きく変化した。2023年中は大規模言語モデル(LLM)が脚光を浴びていたが、マルチモーダル対応モデルが登場した。このモデルでは、文字、画像、音声、動画など、多くの種類のデータを取り込むことで、ユーザーにより適切な結果を提供できる。ServiceNowもこのトレンドに追随し、Now AIのマルチモーダル対応を進めている。Now AIの進化で、IT管理者、従業員、顧客など、様々なタイプのユーザーニーズを満たすワークフローを生成AIの力で強化する。
1つ目の戦略要素である生成AIモデルについて、ServiceNowが顧客に提供する方向性は大きく以下の2つである。
- ServiceNowが構築したユースケース特化型モデルを利用する:このモデルはケースの要約、インシデントの解決、ナレッジベースの作成、複数のナレッジベースの集約などに利用でき、企業が独自にモデルをトレーニングする必要はない。デサイ氏は、ユースケースに特化したモデルの良さを挙げた。まず、企業のデータがServiceNowインスタンスから外に出ることがないため、正確に処理を実行できる。また、モデルが軽量であるため、大規模モデルを実行する場合と比べてレスポンスが速くなる利点もあるとした。
- 自社で利用中のモデルをServiceNowの環境に持ち込む「BYO生成AIモデル」:先進企業の場合、すでに独自で構築したモデルや、トレーニング済みのモデルがあり、できればそのモデルをそのまま使いたいと考えるだろう。BYO生成AIモデルは、そのような企業のニーズに応えるもので、OpenAI、Microsoft、Google、IBMなどをサポートしている。また、ServiceNowのクラウド環境からオンプレミス環境のモデルに接続もできる。
Now Assistで実現するアプリ開発の自動化とSPMの強化
2つ目の戦略要素であるNow Assistについては、今後のロードマップが明らかになった。Now Assistとは生成AI機能の集合のことで、PaaSであるNow Platformに統合され、SaaSであるワークフロー製品群の実行で重要な役割を果たすことになる。
2024年上半期にリリースを予定している生成AI機能は大きく2つに整理できる。
- アプリケーション開発者向けのService Catalog Item Generation、Playbook Generation、App Generation:サービスカタログとは、エンドユーザーが使えるITサービスをリストにまとめたもの。プレイブックとは、カスタマーサービスケースを解決するまでのステップを定義したフローの一種になる。この新機能を使うことで、ITサービスの管理者やアプリケーション開発者は、プロンプトに文字や画像を入力するだけで、サービスカタログやプレイブックを生成すること、また、新しいアプリケーションの構築が可能になる。
- Now AssistがStrategic Portfolio Management(SPM:旧ITBM)で利用できる:SPMとは、ビジネス目標を円滑に達成するため、タスクやリソース、コストなどを管理し、戦略や計画の遂行、ビジネス成果の実現をサポートするプロジェクト管理ツールの一種。一般的なITプロジェクトだけでなく、他の部署が進めているプロジェクトも含め、ポートフォリオ全体を管理できる。たとえば、戦略的計画の進捗管理にNow Assistを使うと、顧客からのフィードバックや要望の分析結果を取り込めるようになり、意思決定の加速を実現できるようになる。
デサイ氏は、「Now Assistロードマップのゴールは、ServiceNowプラットフォーム上であらゆるオブジェクトを生成できるようにすること」と説明し、2024年下半期に提供を予定している生成AI機能として、アナリティクスチャートの生成、スポーク(フローの中に組み込まれた特定のイベントをトリガーとするAPIの呼び出し)の生成があると示した。