Oracle内でも異例尽くしのNetSuite、裁量ある国内事業を率いるリーダーが目指す事業の姿
日本オラクル NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャー 渋谷由貴氏 インタビュー

2016年にOracleに買収されたクラウドERPベンダーであるNetSuite。Oracleでは、買収した製品を融合し同社ソリューションとして提供するのが普通だが、一部製品ではブランドを維持し「Global Business Unit」として独立した組織体制で業務を行うケースもある。その代表がMySQLであり、NetSuiteも同様の形で事業を行っている。そのため日本オラクルには、NetSuite事業を統括するカントリーマネージャー職が置かれ、2023年7月にその役職に就いたのが渋谷由貴氏だ。Oracleでも異例尽くしのNetSuiteをどう率いるのか、渋谷氏に就任の背景と今後の展望について取材した。
中小企業400万社を活性化すれば日本経済にも大きなインパクトが
AWSの営業責任者やBIツールベンダーのDomoの営業部門担当などを歴任してきた渋谷氏が、日本オラクル Vice President NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャーの役職に、どのような魅力を感じたのか。1つは、日本に400万社以上ある中小企業にフォーカスしていることだった。
「日本の中小企業400万社が活性化すれば、日本経済に大きなインパクトを与えられます。NetSuiteはリーズナブルにデータドリブン経営を実現できる素晴らしいソリューションだと思いました」と渋谷氏。とはいえNetSuiteは、市場で良く知られた存在とは言い難いものもある。就任を打診された際に渋谷氏も情報を探したが、豊富にあるとは言えなかった。しかし、そのことは逆にNetSuiteのビジネスを日本で展開する際のやりがいにもつながっている。

渋谷氏はまた、カントリーマネージャーという立場にも魅力を感じたという。営業部門の責任者などの経験の中で、少なからず部門間の連携が上手くいかず歯がゆい思いをした。「カントリーマネージャーであれば、すべての組織を統括できます。そのようなロールの仕事なのは魅力でした」とも語る。
NetSuiteは、ERP/財務会計、顧客管理やEコマースなどを含む全統合型のERPアプリケーションであり、様々な業務を1つのアプリケーションで管理できる。多様なシステムをつぎはぎにしたようなバラバラなデータ構成のERPアプリケーションもあるが、それではシームレスなビジネス情報の管理は難しい。
NetSuiteは複数業務の管理を1つのアプリケーションで実現でき、データも統一されているのでリアルタイムにビジネス状況が把握できるのが特徴だ。また、最初からSaaSで利用することを前提に作られており、「どこからでもERPの情報を管理できるのは、NetSuiteの強みです。さらにビジネスの成長に合わせてスケールを変化できるのも特長です」と渋谷氏は強調する。
ERPと言うと、導入に大きな手間がかかり費用も数億円規模でかかるイメージがある。NetSuiteはSaaSのため導入は容易で、必要な機能から小さく利用を開始できる。そのため初期投資は抑えられ、中小規模の企業でも導入しやすい。さらにSaaSであれば、インフラの運用管理やセキュリティ対策なども、ベンダー側に任せられる。
米国発のソリューションであり、グローバルビジネスにも対応できる。この点は、国産のERPに対する優位性だ。米国発とはいえ、日本固有の制度やルールなどに対応しており、ローカライズも強化している。その上でOracleに買収されたため、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で動いており、それが高い信頼性や拡張性などにつながっている。
「中小企業が独自にOCIを活用するのは難しいかもしれませんが、NetSuiteを使うだけで、OCIの強固なクラウド基盤のメリットを享受できます。NetSuiteは安価でも、安物ではありません」(渋谷氏)
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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