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生成AIの企業活用

サイバーエージェントが生成AI活用で「6割の業務削減」を宣言 独自開発中の「AIナスカ」が一翼を担う

“全社ごと化”するために新設された「AIオペレーション室」に訊く

 サイバーエージェントは2023年10月に専任組織「AIオペレーション室」を新設。社内業務への全面的な生成AIの導入で、2026年までに既存業務の6割を減らし、浮いた時間をより生産性の高い業務に充てることを表明した。その狙いと具体的な取り組み内容について担当者に聞いた。

最重要ミッションは全社の競争力強化

──最初にお二人の担当業務とご経歴を教えてください。

上野千紘(以下、上野):2011年に新卒で入社して以来、メディア事業本部のプロダクトマネージャーとして、一貫して新規事業の立ち上げに関わってきました。2023年10月のAIオペレーション室の新設に関わったことを機に、現在は専任メンバーとして、2023年9月に行われた「生成AI徹底活用コンテスト」で採用された企画案の実行計画策定と進捗管理を担当しています。

紺屋英洸(以下、紺屋):2008年に中途入社してから、主に広告事業本部に在籍しています。最新テクノロジーを導入して生産性を高め、ミスのないオペレーションにする業務設計をやってきました。現在はAIオペレーション室のほかに、広告事業本部、オペレーション、AI事業本部の開発組織も兼務しています。

──AIオペレーション室の所属メンバーは何人ですか。合わせて役割も教えてください。

上野:30人ほどです。私と開発メンバーの一部の専任メンバー以外に、紺屋をはじめとした広告、メディア、ゲームなどの事業責任者クラスの方が10人所属しています。弊社のカルチャーは「自由と自己責任」を尊ぶことが特徴で、各事業の裁量に委ねられていることが多いのですが、生成AI活用は全社で取り組んでいくべきこと。AIオペレーション室に決裁権を持つ事業責任者が参加することで、事業の理解を促し、それぞれの組織での推進を容易にする役割が期待されています。

紺屋:業務効率化のノウハウは広告事業本部に多く蓄積されているため、それを他の事業本部と共有しながら、全社展開を進めることになります。全社を動かすのは大変なことですが、「生成AIは全社でやること」と会社の意思を全社に示す役割も担っているのです。

──AIオペレーション室のミッションは何でしょうか。

上野:「生成AIを全社で活用し、競争力強化につなげること」が、この組織の最重要ミッションです。社長の藤田は、しばしば「生成AIを活用できる会社とそうではない会社は数年後に差が出る。これまで世の中が変わる節目には必ずテクノロジーの進化があった。次は生成AIになる」と話しています。ミッション達成に向けては、AIに明るい社員だけではなく、一人ひとりの底上げが欠かせないと考えました。

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サイバーエージェント AIオペレーション室 室長 上野千紘氏

社内コンテストでグランプリを受賞した「AIナスカ」とは?

──AIオペレーション室が進めている取り組みの内容について伺います。現在は複数の開発案件を進めているわけですよね。

上野:「生成AI徹底活用コンテスト」では全社で活用案を募りました。コンテストの応募数の目標は1,000件でしたが、実際には2倍以上の約2,200件にのぼりました。もちろん一部には「賞金総額1,000万円」に魅かれて応募した方もいたと思いますが、現場にしかわからない業務効率化のニーズを吸い上げようと、実現可能性を問わずに気軽に応募してもらうようにしたことが、多くの参加意欲を高めることにつながったと思います。

 そのうち採用した案は約50件。内訳はAIオペレーション室で進める9件と各事業で進めるものに分かれます。この9件は、サイバーエージェント全社共通の案件として進めることで成果の最大化につながると判断したものばかりです。

──その中からスケジュール調整をする「AIナスカ」がグランプリに選ばれたとのことでした。決め手は何だったのでしょうか。

上野:特に評価されたのは、全社員へのインパクトが大きいことですね。スケジュール調整のアイデアは他にもあったのですが、AIナスカの場合、単なるスケジュール調整にとどまらず、重要なアポに割く時間を増やせるようになるという、全社の生産性向上につながる将来像が明確でした。

紺屋:単にスケジュール調整をしてくれるツールは既に世の中にもありますが、どれも空き時間帯を探して、提案してくれるものばかりで、なかなか弊社のニーズには合いません。弊社の広告事業本部の場合、社内の定例会議だけでなく、外出先でのクライアントとの打合せも多い。1日の予定が丸々会議のことも珍しくありません。加えて、2、3ヵ月先まで予定が詰まっていたとしても、「今週中にこれを決めたい」など、緊急度の高い会議のニーズは突発的に発生します。今は秘書が「この時間帯(の一部)であれば、譲ってもらえるかも?」と当たりを付けて交渉しているのですが、代わりに調整可能な時間帯を提案してくれるのがAIナスカならではの特長です。

──どんな操作で使うイメージですか。

紺屋:参加してほしいメンバー、いつまでに、どれくらいの時間を要するかを入力すると、候補時間帯が複数提案されるような、簡単な操作で使えるものを考えています。役割や参加実績などで、その社員にとって予定の重要度や優先度は変わってくるはずです。まさに今、一人ひとりのデータを学習してもらい、痒いところに手の届くような提案ができるアルゴリズムの構築を進めているところ。2024年6月を目安に、一部のチームにAIナスカのプロトタイプを提供する計画です。

次のページ
「2026年までに6割削減」へ 全社員リスキリングが転換点に

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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