
文房具メーカーとして広く知られるコクヨは、伝統的なモノづくり企業としてのイメージとは裏腹に、ECサイト「カウネット」でメーカーとして最大級のEC事業を進め、デジタル企業としての顔を持つ。そして現在同社は、カウネットで培ったデジタルのノウハウをコクヨ全社にフィードバックすべく、「KOKUYO DIGITAL ACADEMY」と呼ばれる独自のデジタル人材育成施策を進めている。この取り組みの目的や経緯、成果などについて同社のキーマンに聞いた。
独自のデジタル人材教育・実践プログラム「KOKUYO DIGITAL ACADEMY」
日本を代表する文房具メーカーとして、一般消費者の間で広くその名を知られるコクヨ。同社はコンシューマ向け商品だけでなく、法人顧客向けにもオフィス家具やオフィス空間プロデュースなどさまざまな製品・サービスを展開しており、さらにはオフィス用品のECサービス「カウネット」で業界に先駆けてEC事業に乗り出した「デジタル企業」としての顔も持つ。
一方で、そうした先進的なデジタルへの取り組みの成果をコクヨグループ全体に十分生かしきれていない“歯がゆさ”も抱えていたという。
「多くのBtoB製造業がデジタルチャネルを通じて顧客とダイレクトにつながるビジネスモデルを模索している中、コクヨはカウネットでいち早くそうしたビジネスモデルを確立して成功を収めてきました。そういう意味では非常に進んだ会社なのですが、自分たちでそのことを十分自覚できていない面もありました」
こう語るのは、コクヨ 執行役員 ビジネスサプライ事業本部長とカウネット 代表取締役社長を兼任する宮澤典友氏。そこで現在、カウネットで培ったデジタルの強みをコクヨ全体にフィードバックし、競合他社に一歩先んずるために、これまで以上にデジタル施策や人材育成に力を注いでいる。

カウネット 代表取締役社長 宮澤典友氏
そうした施策の1つが「KOKUYO DIGITAL ACADEMY」と呼ばれる同社独自のデジタル人材教育・実践プログラムだ。これも当初は、カウネット事業に限ったデジタル人材育成施策として起案されたものだったという。
「カウネットでもかつては一部のリテラシーの高い人材のみがデータやAIを積極的に活用している状態でしたが、そうではなくどの職種の社員でも当たり前のようにデータやAIを活用できるよう、スキルの底上げを図りたいと考えていました。そこでKOKUYO DIGITAL ACADEMYの構想をコクヨの経営会議で報告したところ、社長の黒田から『これはコクヨ全体で取り組むべきではないか』との話があり、最終的にコクヨ全体を対象にしたプログラムとして2023年6月に立ち上げることになったのです」
ちなみにコクヨでは以前より社内人材の育成に力を入れており、マーケティングスキルを学習するための「コクヨマーケティング大学/大学院」などさまざまな教育プログラムを運営している。現在ではこれらの各種プログラムを「マーケティング」「リーダーシップ」「クリエイティブ」「デジタル」「グローバル」という5つの軸に分類、体系立てた上で総合的な人材育成戦略を策定。KOKUYO DIGITAL ACADEMYはこれらのうち、「デジタル」のスキルアップに特化したプログラムという位置付けだ。
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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