TOKIUMは、全国の経理業務に携わる1,046名とその他の部門の従業員1,052名を対象に、インボイス制度および電子帳簿保存法に関する調査を実施し、その結果を発表した。
調査概要
- 調査期間:2024年3月8~14日
- 有効回答数:経理部門(1,046名)、経理以外の部門(1,052名)
- 調査方法:インターネット調査
- 年代:20~60代
約半数近くの経理がインボイス制度開始後の最初の本決算で不安を感じている
「インボイス制度開始後の最初の本決算で不安を感じていますか?」という質問に対し、「とても感じる」が13.2%、「やや感じる」が35.7%と、およそ49%が不安を感じていることがわかった。
「会計システムに、経過措置や登録事業者か否かなど、税区分が正しく反映されているか(55%)」「受け取った請求書に登録番号や税区分などの不備がないか(52.8%)」に不安を感じている割合が高い
インボイス制度開始後の最初の本決算で不安を感じていると回答した人に、どのような不安があるかを尋ねると、「会計システムに、経過措置や登録事業者か否かなど、税区分が正しく反映されているか」が55%と最も多い回答だった。ついで「受け取った請求書に登録番号や税区分などの不備がないか」が52.8%となった。
インボイス制度では、請求書に「登録番号」や「税率ごとに区分した消費税額等」などの記載が必要となった。所定の記載要件を満たした適格請求書でないと仕入税額控除が適用されないため、会計システムへの正確な情報反映や請求書の不備の有無に不安を感じていることがうかがえるという。
約30%がインボイス制度開始後の経費精算業務における負担が増えたと回答
経理以外の従業員にインボイス制度開始後の経費精算における負担を聞いたところ、負担が「増えた」が11.3%、「やや増えた」が19%と、合わせると約30%が負担が増えたと回答した。また、「増えた」「やや増えた」と回答した人に、「インボイス制度開始前と比べて月に平均何分くらい増えましたか?」と尋ねたところ、一人あたり月平均87.4分の業務時間が増えており、経費精算業務における工数が増加していることが明らかになったとしている。
経理以外の従業員の経費精算業務で増えた負担の内容
インボイス制度開始後の経費精算業務における負担として、「領収書に必要事項(登録番号や適用税率など)が記載されているかの確認」と回答した人が45.5%と最も多い結果となった。また、16.3%が「インボイスに対応していないため経費精算ができなかった」と回答しており、インボイス制度に不慣れな従業員が課題を抱えている様子がうかがえるという。
インボイスに対応していない飲食店やタクシーの利用ができなくなったという回答も
経理以外の従業員を対象に、インボイス制度開始の経費精算トラブルを聞くと、「インボイスに必要な記載事項が漏れており、経理に差し戻された(10.7%)」「インボイスが理解しきれずにルールに則った領収書をもらいそびれた(10.1%)」「インボイスに対応していない飲食店やインターネット通販を利用できなくなった(9.1%)」と、一部でトラブルが発生している様子が見受けられた。
インボイス制度開始後、請求書処理に関する困りごととして、記載事項の確認負担や請求書の再発行依頼、インボイス制度に対応していない事業者との新規取引の見送りなど
経理以外の従業員に、受け取った請求書の処理の困りごとを尋ねたところ、1位は「必要事項(登録番号や適用税率など)が記載されているか確認する作業が増えた(15.8%)」、2位は「請求書に不備があった場合、取引先に再発行してもらう手間がかかる(13.8%)」だった。また、8.7%が「インボイス制度に対応していない事業者との新しい取引を控えるように指示された」と回答し、インボイス制度による困りごとが生じていることがわかった。
電子帳簿保存法への対応ができているのは約35%
電子帳簿保存法への対応状況について、35.2%の経理が「対応できている」と回答。一方で、「猶予期間を活用し、対応完了の目途は立っている」という回答が25.6%、「猶予期間を活用しているが、対応の見通しが立っていない」が14.7%と、宥恕期間は終了したもののまだ多くの企業が対応できておらず、見通しも立っていない企業も一定数あることがわかったという。
電子帳簿保存法への対応で46%が「業務負担が増えた」
「電子帳簿保存法への対応で業務の負担はどのように変わりましたか?」という質問に対して、46%の経理が「増えた」と回答。「増えた」と回答した人に、増えた作業時間を尋ねたところ、一人あたり月平均3時間程度という結果となった。
一方で、業務時間が減ったと回答した人に、業務が減った理由を尋ねると、1位は「システムを利用することで、紙の帳票を探す手間が無くなった(27.6%)」、2位は「システムを利用することで、必要なデータを迅速に収集できるため、監査対応やレポート作成などの時間が短縮された(24.1%)」という回答結果が挙げられたという。
電子帳簿保存法への対応の課題は、インボイス制度の対応もあわせて必要となったことや経理以外の従業員の理解度
電子帳簿保存法への対応状況について、「電子帳簿保存法とあわせてインボイス制度への対応も必要となり業務負荷が増えた」が28.2%と最も多く、ついで「経理以外の従業員が正しく理解・対応できていない」が27.4%となった。2023年10月に始まったインボイス制度と2023年12月末に宥恕期間が終了した電子帳簿保存法への対応が必要となり、経理にとっての業務負担が増加している様子がうかがえる。また、電子帳簿保存法では領収書や請求書なども対象となり、経理以外の従業員の対応が必要なことも課題となっていることがわかった。
経理以外の従業員の約40%が電子取引は電子データで保存する義務があることを知らないと回答
経理以外の従業員に、「2023年12月末の電子帳簿保存法の宥恕期間終了後、電子取引は電子データで保存する義務があることを知っていますか?」と尋ねたところ、58.7%は「知っている」と回答したが、41.3%は「知らない」と回答した。電子帳簿保存法への対応は、請求書や領収書、見積書、契約書などの書類が対象となるため、経理以外の従業員にも関わることが多いものの、約半数近くがまだ知らないということが明らかになったという。
電子帳簿保存法の宥恕期間終了後の業務への影響
経理以外の従業員に、電子帳簿保存法の宥恕期間が終了し、業務へどのような影響が生じているか尋ねたところ、「請求書やルールに従って保存する手間が増えた(19.4%)」という回答が多くみられた。また、「社内から周知はあったが、ルールが分かっていない(11.8%)」という回答もあり、電子帳簿保存法への対応についてまだ浸透しきっていない様子がうかがえる。
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