“Smarter Planet”の世界とは
2日目の基調講演では、米IBMソフトウェアグループ上級副社長兼グループ執行役のスティーブ・ミルズ氏が登壇。今開催のテーマでもある「Information-Led Transformations」による「変革」の1つとも言えるIBMの新たな取り組み「Smarter Planet」が紹介された(注2)。
IBMにおいて「Smarter Planet」というキーワードは、かつてIBMが掲げて世界中に広まった「e-Business」と同等の位置づけという説もある。
Smarter Planetとは、ミルズ氏によれば「企業だけでなく、国家や都市を構成する社会インフラ、自然環境、資源エネルギーなどに関するさまざまな問題を、マイクロプロセッサやICタグで相互接続されたインテリジェントな仕組みで解決すること」であり、その目的を「我々が生活する社会に存在するさまざまな既存のシステムを、最新のITによってさらに効率化させて価値を高め、より住みやすい世界にすること」と位置づけた。
コンセプトだけでは具体的なイメージをつかみにくいが、続けてミルズ氏は、すでに成果が出ている代表的な事例を、利用されているIBMのIOD製品とともに紹介した。
例えば、米カリフォルニア州アラメダ郡では、DB2、InfoSphere、Cognosを使って社会福祉サービスシステムを導入した。6箇所に分散されていたデータベースをDWHに統合し、生活が困難な老人や子供などに関するデータをリアルタイムで収集して検索可能にした。それまで郡のケースワーカーが5ヶ月かけて調査していた情報が1分で把握可能になったという。「限られた財政の中にあって、低コストで質の高いサービスを提供できるようになった好例」とミルズ氏は紹介した。
このほか、RFIDによる徹底したサプライチェーン管理で部品不良を削減し、在庫の適正化に取り組んでいる航空機メーカーのエアバス、特殊なセンサーとWebを使って海洋の水質汚染を監視しているアイルランドのガルウェイベイ、インテリジェントな交通監視システムによる渋滞改善のほか、公共交通機関の利用促進によってCO2排出の削減につなげたスウェーデンのストックホルム市などが紹介された。
「いずれの例も、コストを抑えて管理を効率化し、情報の付加価値を高めるという“スマート”なシステムであり、IBMとして今後も積極的に推進していく」とミルズ氏は締め括った。
以上、5日間にわたって開催されたIOD 2009であるが、基調講演のほかに400の技術系セッション、200のユーザーセッション、100のビジネス系セッションが開催された。一方、展示会場では、パートナー企業200社のソリューションが所狭 しと展示されていたほか、IBMからは事例を含めた数多くのIOD関連のデモが披露されていた。
回を重ねるごとに製品が増え、展示会場の面積も拡大するIODであるが、昨今の厳しい経済環境もあいまって参加者の注目度も一段と高まっているようだった。
(DBマガジン2010年1月号より転載)