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セールスフォースが新戦略「Headless 360」発表──ブラウザからAIエージェント直結へ

 セールスフォース・ジャパンは5月27日、「Salesforce Headless 360」に関するプレス・アナリスト説明会を開催した。同プラットフォームは、4月に米国で開催された開発者向けカンファレンス「TDX 2026」で発表されたもので 、AIエージェントの時代を見据えてSalesforceの全機能をAPI、MCP(Model Context Protocol)ツール、コマンドラインインターフェイス(CLI)として公開する新たな開発・運用基盤である。

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(左から)株式会社セールスフォース・ジャパン 専務執行役員 製品事業統括本部 事業統括本部長 三戸篤氏
 同社 マーケティング統括本部 トレイルブレイザーリレーションズ & コミュニティ担当 稲葉洋幸氏
同社 製品事業統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアマネージャー 王小芬氏
株式会社リバネスナレッジ 代表取締役社長 吉田丈治氏

 冒頭に登壇した専務執行役員製品事業統括本部事業統括本部長の三戸篤氏はまず、同社の自律型AIプラットフォーム「Agentforce」の国内外における広がりを報告。国内では、LINEヤフーが従来のチャットボットから自律型AIエージェントへ移行し、月間30万件以上の問い合わせ窓口の自動化を実装しているほか、UCC上島珈琲は法人向けデータ基盤と連携させて新規の見込み客を2倍に増加させた事例が紹介された。

 Headless 360について、三戸氏は「Salesforceがご提供しているあらゆる資産、つまりCRMを中心としたデータ、アプリケーション上にある様々な業務ロジックやフロー、認証、認可といったセキュリティやガバナンス、さらにはAgentforceで作ったAIエージェント、Slackといったあらゆるアセットが外部のアプリケーションやAIエージェントから直接アクセスできるようにすること」と説明。具体的には、60以上のMCPツール、4,000以上のAPI、220以上のCLIが公開され、どのインターフェースからでもSalesforceの機能を直接呼び出せるようになる。

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 同社が提唱するアーキテクチャーの構造自体に変更はないが、データ集約、業務システムの実行、AIエージェントの構築、エンゲージメントといったすべてのレイヤーにおいて外部解放が進む点が特徴だ。三戸氏は「従来のブラウザ型のユーザーインターフェースから、外部の様々なAIエージェントがSalesforceのアセットをそのまま活用できる。これにより各企業が自律型のエンタープライズを確実に実現できるようになる」と、新戦略がもたらすメリットを強調する。

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 続いて、具体的な機能の詳細について、同社 マーケティング統括本部 トレイルブレイザーリレーションズ & コミュニティ担当の稲葉洋幸氏、および製品事業統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアマネージャーの王小芬氏がそれぞれ説明した。稲葉氏は、TDX 2026におけるメッセージとして「作業者から指揮官・設計者へのシフト」を挙げ、実際に手を動かす開発フェーズをAIに任せ、人間はプロンプトの設計や業務プロセスの構築に注力すべき時代が到来していると指摘。これを支援するため、同社は6月1日に「Agentforce Vibes 2.0」をリリースする。使用する大規模言語モデルの強化やマルチエージェント機能のほか、CursorやClaude Codeといった外部のコーディングツールでもSalesforce独自のスキルやサーバーを動的に参照できる環境を整えるという。

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 さらに、Reactで構築したUIをプラットフォーム上で実行できる「Salesforce Multi-Framework」を2026年7月に提供し、これまでの開発環境の制約を緩和させる計画を示した。

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 王氏は、AIアプリケーションが「同じ入力に対して常に同じ出力を返す決定論的」なものから「無限の出力パターンを持つ確率論的」なものへと変化している現状を踏まえ、運用における品質管理の重要性を説く。この課題を解決するため、同社は新たな「テストセンター」および「カスタムスコア」の機能を提供する。外部ツールから非同期でテストの自動実行が可能となるほか、企業が定義した独自の評価基準に基づいた自動検証を実装。また、本番環境でのA/Bテストを可能にする「Online Experimentation」のパイロット展開や、業界標準の「OpenTelemetry」に対応した詳細なログ出力機能を発表した。これにより、SplunkやDatadogといった既存の外部監視ツールと連携し、AIエージェントのタスク遂行状況や大規模言語モデルの推論ステップをリアルタイムで監視・修正できる体制が整うという。

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 ユーザーおよびパートナーの立場として登壇したリバネスナレッジ 代表取締役社長の吉田丈治氏は、自社におけるSalesforceとSlackの10年以上にわたる活用実績と、Headless 360の実感について話した。同社は生成AIの黎明期から、Slack上で動作する独自のAIアプリケーション「Party on Slack」を開発し、累計12,000人以上のユーザーに提供してきた実績を持つ。

 吉田氏は今回のHeadless戦略を適用し、自社で開発したAIアプリケーション「KLOQ」からSalesforceのコンテキストを呼び出す検証を紹介した。「AIエージェントにSalesforceを触らせてみたら、これまで人間が気づかなかったデータの関連性や活用の余地が見つかり、自分たちがシステムを全然使えてなかったという再発見があった」と実務に基づいた知見を共有。Headless 360により、Salesforceの画面を開くことなく、使い慣れたワークスペースで権限やガバナンスを維持したままデータ処理やレポーティングが完結する。

 最後に吉田氏は「CRMの活用ノウハウは世界中で広く知られたものではあるが、従来は技術者の腕前によって組織のシステム活用度にばらつきが生じ、人材不足も否めなかった。Headless 360はこれらの課題を解決するキーとなる。AIエージェントが頭脳として組織の中に入ってくることで、人間はAIが提示した分析を基に、どのお客様にアクションを起こすべきかという判断に集中できるようになる」と期待を寄せた。

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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