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SPSSの追加で予測分析が可能に~IBM Information OnDemand 2009

2009年10月25日より5日間にわたって、米IBMの年次カンファレンス「IBM Information OnDemand 2009」(以下、IOD)が米国ラスベガスで行なわれた。IBMのデータ管理/活用に関するソフトウェア製品による最新ソリューションや関連技術が紹介された。(DBマガジン2010年1月号より転載)

 2009年10月25日より5日間にわたって、米IBMの年次カンファレンス「IBM Information OnDemand 2009」(以下、IOD)が米国ラスベガスで行なわれた。IODは、IBMのデータ管理/活用に関するソフトウェア製品による最新ソリューションや関連技術を紹介するイベントだ。今開催では、2009年7月に買収が発表された統計解析ツール「SPSS」を活用したより高度なデータ分析の有効性が前面に打ち出されていた。さらに、一連の情報管理/活用ソフトウェアを適用した「SmarterPlanet」という新たな取り組みも発表され、先進事例を含めて具体的な内容が紹介された。

IOD製品群にSPSSを追加

 初日の基調講演で登壇した米IBMビジネスアナリティクス&プロセスオプティマイゼーションゼネラルマネージャであるアンブッシュ・ゴヤール氏は冒頭、「IODとは、コンテンツを含むデータのライフサイクルを管理し、そのシステム全体に関わるコストを下げようという取り組み。そしてデータの信頼性を高めて、ビジネスの最適化のために活用すること」と、イベント名にもなっているIODのコンセプトを改めて説明した。

米IBM アンブッシュ・ゴヤール氏
米IBM アンブッシュ・ゴヤール氏

 昨今の厳しい経済環境の中、企業が競合他社に打ち勝っていくには情報の活用が必須であり、そのためのシステム環境を整える必要があるということだ。具体的には、図のような3層から構成されるソフトウェア製品群が提供されている。

 簡単に見ていくと、一番下がデータ管理のレイヤで、コンテンツ管理ツール「FileNet」やデータ管理ツール「Optim」のほか、図にはないがRDBMSのDB2やInformixがある。中段はデータ統合のためのミドルウェア群で、情報統合基盤の「InfoSphere Information Server」やETLツール「InfoSphere DataStage」、マスタデータ管理ツール「InfoSphere Master Data Management Server」などがある。

図:3層のレイヤで提供されるIOD製品群
図:3層のレイヤで提供されるIOD製品群

 上段がBI(ビジネスインテリジェンス)と呼ばれるデータ分析ツールのレイヤで、BI/企業業績管理ツールの「Cognos」と、2009年7月に米IBMによる買収が発表された統計解析ツール「SPSS」が提供される(注1)。

注1

 上段のレイヤにある「ILOG」は、2009年1月に米IBMが買収したビジネスプロセス管理ツールで、今回はじめてIOD製品体系に加わった。

 ゴヤール氏は、「SPSSによって、これまでのIOD製品体系に足りなかった“予測分析”の機能が加わった。CognosとSPSSを使えば、企業の構造化データはもちろん非構造化データまでを対象に、将来予測を含めた高度なデータ分析が可能となる。これによって市場や需要の急激な変化に対して、前倒しの経営戦略が打てる」と自信を見せた。

 なお、IODでは毎回その年の開催キーワードが掲げられるが、今回は「Information-Led Transformations(情報に基づく変革)」というものだった。これを推し進める具体策の1つとして、IBMは「Business Analystics&Optimization」という情報分析の専門組織を設立し、システム関連のR&Dに60億ドル以上の投資をするという。さらに4000名以上の専任コンサルタントが、金融や公共、物流、製造、通信といった業界別にデータウェアハウス(以下、DWH)やデータ管理、データ分析などのソリューションを提案する。

“データ分析上手”の企業は同業他社に差をつける

 ゴヤール氏に続いて、米IBMグローバルビジネスサービス上級副社長のフランク・カーン氏が登壇した。カーン氏は、「データ分析に投資するということは、ビジネスに計画性を持たせてリスクを回避すること」とし、従来のデータ統合やDWHの構築が重要であることにも増して、蓄積/収集されたデータをいかに活用できるかがこれからの企業経営のカギになるとした。

米IBM スティーブ・ミルズ氏
米IBM スティーブ・ミルズ氏

 「IBMが実施したアンケートによると、ユーザーの3人に1人は信頼できない情報に基づいて意思決定をしており、さらに2人に1人が正しい情報にアクセスできていないことが分かった。リアルタイム性に欠け、また適切でないデータを基に経営戦略を立てることは非常に危険だ。

 一方、同業他社よりも良い実績を上げている企業は総じてデータ分析がうまく、将来予測の確度も高いということが分かった」(カーン氏)。続けてカーン氏は、企業で実際にデータ分析者としてIBMのIOD製品を活用しているユーザーを壇上に招き、パネルディスカッションを行なった。

 全米で5400万人の保険データを管理するビジネスインフォマティクスでは、DWH上の加入者データを使って医療制度の変更に合わせた保険のベンチマークを行ない、さまざまな可能性に対応しようとしている。担当者は、Cognosによるクエリ作成の自由度の高さを評価していた。

 また、米国のファッションブランド、エリー・タハリでは、自社のDWHから150人のユーザーが1ヶ月に2万9000件のレポートを作っているが、リアルタイムでの在庫管理や納期管理が奏功し、物流コストを85%に削減した。

 さらに、国際石油メジャーのシェブロンでは、同社の全ビジネスの上流から下流までのデータを資産として管理することに注力した。そのうえでデータの品質を高めて各種の予測分析を行ない、昨今の競争激化の中で設備投資戦略やサプライチェーン最適化に活かしているという。カーン氏は、ビジネスにおける正しいデータに基づく分析や予測の重要性もさることながら、そのための体制作りや投資の必要性についても強調した。

DB2は今後も対Oracle向けの機能強化に注力

 2009年6月、IBMは競合製品であるOracleとの互換機能(PL/SQLサポートなど)をウリにしたDB2 9.7を出荷し、日本国内でも注目を集めた。DB2の製品開発にも携わってきたIOD製品群の責任者である米IBMのアービン・クリシュナ氏に、対Oracleの戦略を語ってもらった。

米IBM アービン・クリシュナ氏
米IBM アービン・クリシュナ氏

 OracleとDB2の競合関係は20年間続いてきたが、2年ほど前に私はこの状況を見直して、実際はDB2のほうが優れているのになぜ顧客が利用してくれないのかと考えた。1つの答えは、すでにOracleを使用している場合、当然だが移行が大変だということ。

 

 そこで移行を容易にする仕組みを考え、現在のDB2 9.7に至った。出荷前に顧客にテストしてもらったところ、Oracleベースで99.5%カスタム化されたシステムであっても、DB2へのマイグレーションが可能であることが実証された。

 

 顧客には、一度アプリケーションを作ってしまえば、どちらのDBでも使えると説明している。 そして、今年の11月からは新たに共有ディスク型のクラスタ機能である「DB2 pureScale」をオプションとして提供する。アプリケーションが増えていくと、DBには継続的な可用性が求められる。我々は、Oracle RACには可用性はあっても、継続性を持たせるにはかなりの設定作業を要すると見ている。

 

 ここを1つの焦点にDB2 pureScaleで対抗していく。 また、次のバージョンでは、DB2によるSAPアプリケーションのサポート強化を予定している。さらに、ストレージコストの大幅な削減にも注力しており、このあたりもOracleからのマイグレーションの切り口にしていきたい。(談)

“Smarter Planet”の世界とは

 2日目の基調講演では、米IBMソフトウェアグループ上級副社長兼グループ執行役のスティーブ・ミルズ氏が登壇。今開催のテーマでもある「Information-Led Transformations」による「変革」の1つとも言えるIBMの新たな取り組み「Smarter Planet」が紹介された(注2)。

注2

 IBMにおいて「Smarter Planet」というキーワードは、かつてIBMが掲げて世界中に広まった「e-Business」と同等の位置づけという説もある。

 Smarter Planetとは、ミルズ氏によれば「企業だけでなく、国家や都市を構成する社会インフラ、自然環境、資源エネルギーなどに関するさまざまな問題を、マイクロプロセッサやICタグで相互接続されたインテリジェントな仕組みで解決すること」であり、その目的を「我々が生活する社会に存在するさまざまな既存のシステムを、最新のITによってさらに効率化させて価値を高め、より住みやすい世界にすること」と位置づけた。

 コンセプトだけでは具体的なイメージをつかみにくいが、続けてミルズ氏は、すでに成果が出ている代表的な事例を、利用されているIBMのIOD製品とともに紹介した。

IODの事例を紹介するユーザー企業の担当者と、米IBM フランク・カーン氏(右端)
IODの事例を紹介するユーザー企業の担当者と、米IBM フランク・カーン氏(右端)

 例えば、米カリフォルニア州アラメダ郡では、DB2、InfoSphere、Cognosを使って社会福祉サービスシステムを導入した。6箇所に分散されていたデータベースをDWHに統合し、生活が困難な老人や子供などに関するデータをリアルタイムで収集して検索可能にした。それまで郡のケースワーカーが5ヶ月かけて調査していた情報が1分で把握可能になったという。「限られた財政の中にあって、低コストで質の高いサービスを提供できるようになった好例」とミルズ氏は紹介した。

 このほか、RFIDによる徹底したサプライチェーン管理で部品不良を削減し、在庫の適正化に取り組んでいる航空機メーカーのエアバス、特殊なセンサーとWebを使って海洋の水質汚染を監視しているアイルランドのガルウェイベイ、インテリジェントな交通監視システムによる渋滞改善のほか、公共交通機関の利用促進によってCO2排出の削減につなげたスウェーデンのストックホルム市などが紹介された。

 「いずれの例も、コストを抑えて管理を効率化し、情報の付加価値を高めるという“スマート”なシステムであり、IBMとして今後も積極的に推進していく」とミルズ氏は締め括った。

 以上、5日間にわたって開催されたIOD 2009であるが、基調講演のほかに400の技術系セッション、200のユーザーセッション、100のビジネス系セッションが開催された。一方、展示会場では、パートナー企業200社のソリューションが所狭 しと展示されていたほか、IBMからは事例を含めた数多くのIOD関連のデモが披露されていた。

 回を重ねるごとに製品が増え、展示会場の面積も拡大するIODであるが、昨今の厳しい経済環境もあいまって参加者の注目度も一段と高まっているようだった。

(DBマガジン2010年1月号より転載)

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