ITインフラの運用負荷を軽減するアプローチとは
これまで見てきたように、Nutanixは容易なデータ管理、一貫したセキュリティ、プライバシーの確保を強みとしている。荒木氏は「これらのメリットを日本企業に対して訴求することで、既存のレガシーな仮想化環境のモダナイズプラットフォームとしてNutanixを採用してもらうための働きかけを行っています」と述べる。
既存のレガシーな仮想化環境をモダナイズするといっても、顧客の要望は様々だ。既存の仮想マシンのコンピュートノードだけをクラウドに移行したい場合もあれば、ハードウェアの更改をしたばかりで、当面はそれを生かしたいと考える場合もある。サーバーとストレージの導入時期が異なるので、投資を生かすために別々のタイミングでクラウド化したいケースもあるだろう。
「Nutanixは、ソフトウェアベンダーとして多くのハードウェアベンダーの製品をサポートしており、クラウドにもマルチに対応しているので、顧客の多様なニーズにも柔軟に対応できます。モダンなITインフラとして様々な選択肢を提供できるのが我々の強みです」(荒木氏)
また、スナップショット技術を使えば、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)にデータを渡すことで、BCP対策の観点から災害時に備えた環境も簡単に構築できる。「既存のファイルサーバーのデータをNutanixのオブジェクトストレージに集約することも可能です。様々なものがNutanixのコンソールで一元的に管理できます」と荒木氏は言う。
最終的にNutanixにインフラ環境を集約・統合化できれば、構成はシンプルとなり、運用面でもバージョンアップ作業などの負荷低減が期待できる。Nutanixの環境にスムーズに移行した上で安定した運用を実現するために、「パートナーとの連携強化、技術者の育成にも力を入れています」と荒木氏。そのためにパートナーエコシステムを構築したり、技術者ミートアップなども開催したりすることで、フォローアップを図っているという。
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AI活用の懸念:データセキュリティにどう対応する?
Nutanixは、今後増加が見込まれる生成AIのワークロードの要求にも応えられる。荒木氏は、生成AIの活用環境を構築するケースとして、「パブリッククラウドベースの汎用的なモデルを活用する方法と、AIで活用したい重要な情報をオンプレミスやプライベートクラウドに置き、ローカルのAI環境で活用する方法の大きく2つに分けられます」とした。
Nutanixは、各パブリッククラウドはもちろん、ローカルでは生成AIの学習や生成に必須となる高性能なGPUサーバーなどをサポートしている。さらに、現状の多くのAI関連アプリケーションやツールは、コンテナベースで提供されていると荒木氏。「ここはNKPの出番です。AIを活用するにあたってはデータをどう連携するかがカギとなり、これにはUnified Storageの技術が生きてきます」と述べる。
企業でAIを活用する際に有効なのが「Nutanix Data Lens」だ。ビジネスでAIを本格的に活用しようとするならば、当然利用するデータのセキュリティやガバナンスを確保する必要がある。Nutanix Data Lensは、Nutanix Cloud Platformで提供されるSaaS形式のデータセキュリティソリューションで、データの安全性確保に貢献する。
具体的には、脅威と思われるものを迅速に検知・ブロックし、ワンクリックでデータを復旧できる機能を備えている。また、非構造化データに対する洞察を提供し、データの利用状況を可視化することで、セキュリティリスクの評価やコンプライアンス対応も支援する。オンプレミス、ハイブリッド、マルチクラウド環境のすべてに対応し、Nutanixストレージサービスと連携して一貫したデータ管理に導くものだ。
また、異常なアクティビティの特定やユーザー行動の監査機能も備えており、セキュリティとコンプライアンスのリスクを事前に軽減することが可能となる。クラウドサービスとして提供されるため、スケーラビリティも高く、企業のデータセキュリティを包括的に強化できるという。
そして、AIを活用するためには膨大なデータを処理しなければいけないため、インフラには拡張性も欠かせない。「企業のAI活用に求められる要件のすべてに柔軟に対応できるNutanixは、AIの基盤としても最適なインフラを提供できます」と荒木氏は自信を見せる。
効率的で拡張性のあるインフラ基盤を提供するだけでなく、AIやコンテナ、さらには包括的なデータセキュリティなどをサービスとして活用可能なソリューションベンダーに、Nutanixは進化している。「我々の目指している方向性やビジョンを日本のお客様に理解してもらうことが重要です」と荒木氏。今後は、顧客への積極的なアプローチと、より丁寧な説明が肝になってくる。Nutanixの目指している方向性を顧客が理解すれば、Nutanixソリューションの採用はより増えていくだろう。