「Intelligent Automation」を掲げ、75%のプロセス自動化を実現

銀行から、リース、証券、クレジットカード、コンシューマーファイナンスまで、「複合金融グループ」として事業活動を展開しているSMBCグループ。持株会社である三井住友フィナンシャルグループの下、「リテール」「ホールセール」「グローバル」「市場」の4つの事業部門を設置している。
また、本社部門ではCxO制を導入し、グループ全体の企画、管理関連の統括者を明確にし、経営資源の最適化を重視した運営を行っている。基調講演のゲストとして登壇したグループCFO兼グループCSOの伊藤文彦氏は、経営管理の責任者としてだけでなく、グループ全体の方向性を示す経営戦略の策定と実行の責任者の職責を担う。
グループの企業価値最大化を目指し、2017年から三井住友フィナンシャルグループがOracle Fusion Cloud ERPの導入で取り組んできたのが「会計業務共通化プロジェクト」である。「グループベースでの会計システムの共通化はグループ経営の強化だけでなく、従業員エンゲージメント向上にもつながる」と伊藤氏は述べた。このプロジェクトで実現を目指したのが「Intelligent Automation」、ビジネスプロセスの自動化である。これまで手作業に依存していた業務がなくなる分、新しい挑戦のための時間を創出でき、働くモチベーションが向上すると期待した。
すでに、請求書を受領した後の申請から支払いまでのプロセスは、75%の自動化を達成している。これは生成AIの活用抜きの数字で、その先も見据える。伊藤氏は「生成AIの活用を通じて、経理業務の90%以上の自動化を実現したい。本音を言えば、エンドツーエンドで100%の自動化を実現したい」と、意欲を示した。さらに、高度な専門知識を必要とする経理業務のプロセス実行を、できるだけAIに任せ、グループ全体での生産性の向上を図ろうとしているとした。プロセス自動化の先で目指すのは、経営管理の高度化である。
SMBCグループほどの規模にもなれば、データサイロの問題は深刻だ。グループ本社は、各社からの財務データの集約をこれまでは報告に依存していた。代わって、ダッシュボードで可視化し、経営管理の高度化に使えるようにする取り組みを2025年度から始めると伊藤氏は明かし、今後に向けては「新しい内部統制の枠組みが必要になると思う」と語った。これまでは人間が行う作業の質とリスクをコントロールするのが基本的な統制の考え方だったが、AIエージェントが業務に参加するようになれば、内部統制の考え方も見直す必要が出てきそうだ。伊藤氏は、「グローバルの基準と金融法規制に対応したコラボレーションのあり方を探っていきたい」と述べた。