その投資に価値はあるのか?──テクノロジー投資からビジネス価値を創出する米国発の方法論に熱視線
日本企業を悩ませてきたテクノロジー投資の費用対効果、可視化に向けた最善のアプローチとは
テクノロジー投資の「目的指向」を可視化する“TBM”とは?
こうした課題を解決するための方法論として、注目を集めているのが、「TBM(Technology Business Management)」だ。もともとは2007年に米Apptioの創業者であるサニー・グプタ氏が提唱したコンセプトに基づき、KPMGやEY、Deloitte、ISG、McKinseyなどのパートナーによって確立された。
現在では、2012年に発足したTBM Councilが主導してこの方法論を確立し、進化させる役割を果たしている。TBM Councilは、CIO、CFO、CTOといった、テクノロジーに関わるエグゼクティブやリーダーを中心に構成された独立性を持つコミュニティだ。参画企業の実体験も融合させながら、テクノロジー投資の価値を客観的に評価・可視化するための体系的な方法論として、TBMは一層の支持を集めている。また、TBM Councilは業界の変化や新たなテクノロジーに対応し続けるため、常にこの方法論をアップデートしている。
その核心は「目的指向の可視化にある」と塩塚氏。IT部門だけでなく、事業部門や財務部門など、IT戦略の意思決定に関わる様々なステークホルダーが、共通の言語や認識を持てるような形で、ITコストの最適化と投資判断を行うための方法論なのだという。

TBMではまず、ITコストの内訳を「TBMタクソノミー」と呼ばれる標準モデルをもとに可視化する。具体的には、「利用部門」「アプリケーションサービス」「ITタワー」「コストプール」という4階層でITコストを構造的に捉える。最下層の「コストプール」は、財務部門が理解しやすい勘定科目に近い分類、そして「ITタワー」はIT部門が理解しやすい技術の分類を用いて、ITコストを可視化していく。
続いて、「アプリケーションサービス」ではアプリケーションごとのTCO(総所有コスト)を示し、最上層の「利用部門」では、各ビジネス部門へのコストの配賦状況を可視化。これにより、経営層や事業部門が理解しやすい形でITコストの全体像を把握できる。このように、経営層や事業部門、財務部門、IT部門といった視点の異なるプレイヤーが、それぞれの立場から理解しやすい切り口でITコストを整理できるのが、TBMタクソノミーの特徴だ。

進化を続ける「TBM」、いかなる時代でも“戦略的”なテクノロジー投資を実現
では、このTBMをどのように実践していけばよいのか。ITコストの可視化から分析、最適化に至るまでをサポートするためのプラットフォームとして、塩塚氏の所属するIBMから提供されているのが「IBM Apptio」だ。「外部データソースからの取り込み・変換・ロード」「TBMタクソノミーに基づく4階層でのコスト配賦計算」「配賦ロジックやルールの管理」「可視化のためのレポート生成」といった機能を提供するとともに、多くの企業で共通して見られる“テクノロジー投資管理のユースケース”に即した標準テンプレートも備えている。
「現在は、400以上の標準的なユースケースをサポートしています。お客様の経営課題やIT部門の課題を解決するために、どのユースケースを採用し、そのユースケースを実現するためにどのようなレポートを作成すべきかといった支援を継続的に行っています」(塩塚氏)
なお、IBM Apptio最大の強みは、単なるコストの可視化や管理に留まらず、先に述べたように、その結果を具体的なアクションに結び付けられる点にある。「コストの絶対額だけを可視化・評価するのではなく、トランザクション単位でのコストを算出することで、より戦略的な投資判断が可能になる」と塩塚氏は語る。
たとえば、総コストで見れば増加していても、単位当たりのコストが下がっているとわかれば、追加投資の判断が可能だ。逆に、総コストが下がっている場合でも、単位当たりのコストが上昇しているのであれば合理化の余地があると判断できる。IBM Apptioを活用すれば、そうした判断能力を組織に実装できるのである。

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さらにはTBMそのものも、先述のTBM Councilがテクノロジーの発展に合わせて進化と改良を続けており、最新のフレームワークではAIやIoT、サステナビリティなどの要素を考慮したアプローチが新たに取り入れられている。

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「テクノロジーは物凄いスピードで進化を続けています。ここ数年だけを見ても、クラウドやAIの発展・活用が急速に進んでいますよね。これではすぐにフレームワークも陳腐化してしまいます。しかしTBMは、新たなテクノロジーを財務・経営の観点からどう評価・管理すべきか、常にアップデートされ続けているのです」(塩塚氏)
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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