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交通系ICに一石を投じた「タッチ決済」という選択肢──三井住友カードが挑むMaaS構想の現在地

「180の交通事業者が一つのクラウドでつながる」 移動と消費をつなぐデータ活用の在り方

従来のMaaS構想は現実的ではない? 現場の負担を軽減する構想とは

 2025年3月、三井住友カードはstera transitの基盤を活用したMaaSプラットフォームの稼働を開始した。EnterpriseZineでもストレートニュースとして取り上げたところ、読者から大変大きな反響が寄せられている。

 

 このMaaSプラットフォーム稼働の背景には、従来のMaaS推進における課題認識があると石塚氏は話す。

 「令和元年度から国土交通省の日本版MaaS推進事業が始まりましたが、交通事業者の多くが赤字経営で補助金に依存している中、新たな投資や運用経費の負担が課題となっているのです」(石塚氏)

 三井住友カードのMaaSプラットフォーム構想は、この課題を解決する独自のアプローチを採用している。約180社の事業者が一つのクラウドシステムでつながるstera transitを基盤にしていることが同プラットフォームの特徴だ。「この規模でのクラウド型交通システムを展開しているのは日本で我々だけです。プラットフォーム上に共通機能を用意し、事業者が必要な機能を選択して利用できる仕組みを構築しようとしています」と石塚氏。

 地域ごとに開発された専用アプリをユーザーに提供する発想が起点となっている従来のMaaSに対し、同社は既存の様々なアプリとAPI連携する戦略を採る。旅行者が新しい地域でわざわざ専用アプリをダウンロードしなければいけないような仕組みは現実的ではなく、利便性に欠ける。既存の旅行アプリやSNSなど、利用者が普段使っているサービスとこのMaaSプラットフォームが連携することで、より自然な形でサービスを提供可能とすることを目指しているのだ。

 交通機関で働く人たちの負担軽減も重要な観点だ。石塚氏は「バスの乗務員や駅員の人手不足が深刻化する中、多様な認証方式が混在していると対応が増えて現場の負担になってしまいます。どのアプリ経由でも、タッチ決済で支払いが完結できる環境を整えることで、現場のストレスを大幅に軽減できます」と述べる。

 2025年3月からは、MaaSプラットフォームを活用した利用者向けの総合交通アプリ「Pass Case(パスケース)」において江ノ島電鉄が販売している『江ノ電1日乗車券「のりおりくん」』の取り扱いが開始されており、現場からは好意的な反応が寄せられているという。「駅係員は道案内からチケット販売まで多様な業務を担っています。電子チケットはスマートフォンの電波状況によって動作が不安定になりがちですが、タッチ決済であれば電波に関係なく確実に動作し、現場の負担が全然違うという声をいただきました」と成果を語る。

 利用者からは「スマートフォンでのタッチ決済にも対応してほしい」「Visaだけでなく他ブランドのカードも使えるようにしてほしい」などといった声が寄せられているという。石塚氏は、スピード感をもって段階的に機能を拡充していく予定だとし、「導入を通じて見えてくる課題を着実に解決していきたいと考えています」と意気込みを語った。

 興味深いのは、使い勝手に関する否定的な意見がほとんど見られないことだ。石塚氏はこの点について、「改札での混雑を考えると、アプリを開く必要がないタッチ決済の方が、むしろスピーディーに利用できるという評価をいただいています」と、タッチ決済の優位性を述べる。

次のページ
タッチ決済が地域活性化に? 移動と消費行動をデータでつなぐ

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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