管理職志向の低下、一方でフリーランス市場は拡大か
レバテックは、IT人材を採用する企業担当者1,000名とIT人材3,000名を対象に、管理職への意向や採用実態を調査。その結果、管理職を目指すIT人材は15.7%にとどまり、「給与を上げたい」(56.7%)が主な理由として挙げられた。一方、管理職を希望しない理由として「責任やストレスが増える」(48.4%)や「専門性を磨きたい」(11.7%)などが上位にくると、管理職として働く約4人に1人(24.1%)が「続けたくない」と回答。「責任やストレスの増加」(52.0%)や「給与の割に合わない」(12.5%)が主な理由となった。
また、IT人材を採用する企業の約5社に1社(20.5%)が管理職の採用を強化し、“スカウト型求人”など積極的なアプローチを推進。IT業界でも管理職の役割や待遇の見直し、キャリアパスの多様化が求められていることがわかる。
一方、拡大傾向にあるのが「ITフリーランス」市場だ。
レバテック ITソリューション事業部 部長であり、ITフリーランス支援機構の副代表理事を務める小池澪奈氏は「フリーランスのIT人材で、最も多いのは『報酬を上げたい』と考える人です。次いで『案件選択の自由度』を求める人が多く、その中でも特に管理職としての業務負担を避けて『技術業務に専念したい』と考えるケースが目立ちます」と話す。
社内にとどまるうちに技術業務だけでなく、後進の育成や管理を任されるようになるケースは少なくない。管理職として組織を統括するより、自身の専門性を高めたいと考えるIT人材は多く、結果としてフリーランスに転向するケースが増えている。管理職を避けたいがためのIT人材の流出は、企業にとって大きな課題だ。この課題の背景として「現場負担が確実に増えている影響は大きい」と小池氏は指摘する。
たとえばユーザー企業では、ベンダーに委託していた業務を内製化する動きが加速しており、ゼロから体制を構築しなければならない状況だ。単なる管理業務だけでなく、調整業務や組織のコントロール、採用、離職防止の対策まで求められ、新たな管理職業務が増えている。特にIT人材は転職市場での価値が高く、それを引き止めるための“働きやすい環境づくり”にも気を配らなければならない状況だろう。
もちろん管理職のオファーを断り、会社にとどまることも一つの選択肢だが、それでも現職を離れてフリーランスへと転向する技術者は増えている。前述したように案件を自由に選べる点はもちろん、給与・報酬が見合わない点も課題となっているからだ。この状況が変わらなければ人材流出が進み、採用も難しくなるだろう。
「報酬体系の改善は日本全体にとって重要です。現在、IT人材に占めるフリーランスの割合は10%程度ですが、今後さらに拡大するでしょう。ただし現場には正社員が求められる場面も多く、適切な役割分担が求められます」(小池氏)
では、フリーランスの活用が進めば、管理職の負担軽減にもつながるのだろうか。管理職の職責が重くなっている中、「管理職の業務を適切に切り出せれば、負担は軽減するでしょう。そうなれば正社員にとどまる人、フリーランスから正社員に戻る人も増えるかもしれません。単にフリーランスへの転向者が増えるのではなく、そうした循環が生まれることが理想的です」と話す。