フリーランスに求められる役割、企業への影響は?
フリーランスへの転向が最も多いのは40代だ(フリーランス向けエージェントサービス「レバテックフリーランス」の稼働者数に基づく)。20代は独立を目指し、成長や給与面を重視している人が多いという。小池氏は「40代から50代にかけては、エンジニアとしてキャリアを積み上げてきた人が多く、管理職にならずに技術を磨き続けたいと考える傾向にあります」と説明する。前述した管理職に関する調査でも、20代は残業時間の増加を懸念し、40代や50代は「自分は管理職には向いていない」という声が目立った。
いわゆるミドルシニア層のフリーランスは、企業からの引き合いも増えている。小池氏によれば、40代は即戦力として迎合される傾向にあり、特に自動車や製造業など、特定業務に精通した人材の需要は高いという。また経験豊富な50代のフリーランスに対するニーズも高まっている。さらに管理職やプロジェクトリーダーの経験は市場価値が高く、たとえばITコンサルタントやプロジェクトマネージャーのポジションでは、月額報酬が150万円ほど高くなるケースも珍しくないという。
「ただしミドルシニアにはドメイン知識だけでなく、ソフトスキルが求められます」と小池氏。たとえば現場の管理職や正社員には30代が多いため、年齢などにとらわれず、適切なコミュニケーションを取りながら柔軟・円滑に対応できることが重要になるという。

ITフリーランス支援機構 副代表理事 小池澪奈氏
【写真提供:レバテック株式会社】
では、管理職の負担を軽減する場合、具体的にどのような役割を求められるのか。小池氏は「特にプロジェクトマネジメントや技術支援をフリーランスが担うケースが増えています」と説明。こうした動きは中堅企業に多く、大手企業においても社内人材だけでは専門知識が不足しがちな分野で登用が進んでいるという。
また、フリーランスを迎えるにあたり「業務範囲を明確にすることが重要」とも話す。たとえば組織運営や人事関連の業務は正社員の管理職が担当する一方、専門技術が求められる分野においてフリーランスが求められるケースは多い。そのためプロジェクトの期間や目標を明確にし、認識の齟齬を防ぐことが重要となる。事前に業務内容やゴールをすり合わせる際、具体的な目標にどこまで対応できるのかを確認・合意することで、良好な協力関係を築きやすい。
特に機密情報を扱う業務や、競合他社での経験がある人材と契約を結ぶ際は、事前にリスクを軽減することが重要だ。最終的な意思決定は正社員が担い、あくまでも提案や情報収集を担当してもらうなど、役割を明確にすることは欠かせない。
「まずは技術顧問やアドバイザーとして依頼してみると良いでしょう。たとえば新人教育に追われる管理職に対して、技術面をフォローするアドバイザーとしてサポートしてもらうことも有効です。管理職が新しい技術を学び続ける負担もある中、試しやすい選択肢でしょう」(小池氏)
アドバイザーの業務としては、社内システムのアプリケーション開発、新技術の導入において適切な言語や環境を選定するなどだ。こうした業務は、これまでIT部門や取り引きのあるベンダーに依頼することが一般的だったが、この流れが変わりつつある。小池氏は「プロジェクト進行のスピードに違いがあることが大きいでしょう。ベンダーに依頼すると見積もりや契約調整に時間がかかる一方、フリーランスならすぐにプロジェクトに参加してくれます」と語る。
また、社内にノウハウを蓄積しやすく、組織全体の技術力が向上する点もメリットだ。新しいスキルやスピード感を持つフリーランスが良い影響を与え、従来のやり方にとらわれず、新たな成長の機会が生まれる契機にもなるという。