損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)は、代理店と営業店、営業店と本社間の照会回答業務の効率化を目的として、生成AIの大規模言語モデル(LLM)を搭載した照会回答支援システム「おしそんLLM」を2025年6月に全国の営業店や本社に向けてリリースしたことを発表した。
おしそんLLMは、損保ジャパンが保有するマニュアルやQ&Aデータなどを学習し、照会内容に最適な回答案を自動生成するシステム。同システムはエンジニアを中心とした内製チームで開発しており、ユーザーの改善要望や利用ログの分析等に応じてスピーディーにシステムを改善することが可能。トライアル前からシステムの改善を重ねてきたという。

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同システムでは、生成AIが作成した回答案および参照先資料が画面に表示され、回答者はその内容をもとに回答を作成できるとしている。ハルシネーションリスク(AIが誤った情報をあたかも正しいかのように提示するリスク)を抑えつつ回答作成業務の効率化を図ることで、照会対応における業務時間を削減するとのことだ。
同社は、散在するQ&Aなどを自然文で横断検索し、解決できない場合はそのまま本社に照会できるナレッジ検索システム「教えて!SOMPO」の利用を2017年に開始している。これにより課題解決力は向上したが、「教えて!SOMPO」内での照会は年間67万件に上り、回答業務の効率化・負荷軽減が新たな課題になっていたという。
この課題解決を図るため、2023年から「おしそんLLM」の開発を開始。2024年度に一部の営業店と本社でトライアルを実施したとしている。同トライアルにおいて、「おしそんLLM」が回答可能な照会(全体の約6割相当)に対して約4割の業務時間削減効果が認められたため、全国の営業店における利用開始に至ったとのことだ。

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損保ジャパンは、今後も蓄積される照会回答データから学習サイクルを回すことで、回答精度の向上を目指すとしている。
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