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Data Tech 2025 レポート

来る「AI産業革命」に備える関西電力、“脱JTC宣言”でAIレディな企業への変身を急ぐ

電力自由化に人口減少……エネルギー業界を巡る激動に「“関西電力”のままではいけない」

 生成AIの登場により、企業は「AI活用」のフェーズから「AI前提の事業再構築」へとパラダイムシフトを迫られている。2025年11月、EnterpriseZine編集部主催の「Data Tech 2025」のクロージングセッションに、関西電力 理事 IT戦略室長の上田晃穂氏が登壇。上田氏は、2030年に到来すると予測される「AI産業革命」を見据え、同社がいかにして伝統的な日本企業(JTC)の体質を脱し、「AIファースト企業」へと変貌を遂げようとしているのか、そのビジョンと実践の裏側を語った。本稿では、同社のDX戦略の中核を成す「データマネジメント」「人材育成」「組織風土改革」の三位一体の取り組みをレポートする。

エネルギー業界に押し寄せる「5つのD」とAI企業への変貌

 上田氏は、エネルギー業界を取り巻く環境変化として次の「5つのD」を提示した。

  • Decarbonization(脱炭素化):火力発電中心の事業構造からの脱却、CO2排出削減の至上命令
  • Decentralization(分散化):大規模発電所から、再生可能エネルギーや系統用蓄電池など、分散した電源の最適制御
  • Deregulation(自由化):2016年4月の電力小売全面自由化による競争激化
  • Depopulation(人口減少):毎年90万人規模で人口減少が進む国内市場
  • Digitalization(デジタル化):上記4つの課題を同時に解決し、競争力を維持するためのカギ

 これらの変化の中でも、特に「自由化」と「人口減少」を背景に、同社が従来のビジネスモデルを根本から見直す必要性が生じているという。「電力は2016年4月から全面自由化しており、東京にお住まいの方でも関西電力の電気を買えるようになった。この環境変化を機に、関西電力はいつまでも『関西』『電力』であってはならない」と上田氏は話す。これは顧客対象の変化だけでなく、同時に「いつまでも電力だけを売っているわけにはいかない」という事業領域の限界も意味する。

 上田氏は続けて「(人口減少は)毎年90万人減っているが、これは仙台市や千葉市の人口に匹敵する。この恐ろしいスピードで進む人口減少と市場縮小の中で生き残るには、デジタル化こそが全ての解になる」と強調した。

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関西電力株式会社 理事 IT戦略室長 上田晃穂氏

 生成AI元年となった2023年、関西電力はそれまでの延長線上にあるDX戦略を破棄し、2030年ごろには破壊的なイノベーション「AI産業革命」が起こると仮定して、そこからバックキャストする形で戦略を再構築。そのときに掲げた目標が「脱JTC」と「AIファースト企業への転換」である。

 上田氏は、両者の違いをマラソンと短距離走に例えて解説した。

 「JTCの経営スタイルは42.195kmのフルマラソンに似ている。ゴールもコースも決まっていて、計画通りに淡々と走るのみ。しかし、現代のようなVUCAの時代においては、走っている最中にゴールが変わったり、道が消えたりする。これからの時代に必要なのは『100mダッシュを422本繰り返す』ようなアジャイルな走り方だ。まずは仮説を持って全力で走り、立ち止まって方向を確認し、また走る。これこそがAIファースト企業の戦い方だ」(上田氏)

 この対比は、AI時代における企業文化と経営サイクルの違いを示す。JTCがAIを「どこに使うか」と手段として捉えるのに対し、AIファースト企業は「AIを前提」に業務を再構築し、競争優位の源泉とする。つまり、計画重視の経営から「Sensing(感知)→Seizing(捕捉)→Transforming(変革)」のサイクルを回すアジャイル経営への転換が必要だ。意思決定においても、KKD(勘・経験・度胸)に頼りがちなJTCに対し、AIファースト企業は事実・データに基づいて行われる。

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 この変革を実現するため、同社はDXをあくまで“手段”と位置づける。中期経営計画(KX:Kanden Transformation)を実現するために、上田氏は「家」の仕組みに例えて説明した。

 事業部門におけるデジタル変革やAIエージェントとの協働といったDXの取り組みを居住空間とすると、それを人材、データ、ガバナンスの3つの「DX基盤」が支える。それだけではない。上田氏が「いくら立派な家(DX戦略)を建てても、土壌(組織風土)が軟弱であれば家は傾く」と語るように、DX基盤を盤石にするために必要なのが、挑戦と失敗を許容する文化である。「しっかりと成果を出すためには、一番下にある組織風土改革が一番大事であると言っても過言ではない」と続けた。

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「AIが育つ良い水を」データマネジメントルールを全社で策定

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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