クレディセゾン・栗田工業・アフラックが実践した「真のAIドリブン経営」とは
日本テラデータ 「AI Innovation Day 2025 Tokyo」レポート
30年の信頼関係で挑むAIドリブン、アフラックのデータ戦略

生命保険業界でも、データとAIを活用したビジネス変革が加速している。アフラック生命保険 執行役員の高橋直子氏は、同社が30年にわたってTeradataとの信頼関係を築きながら進めるデータ利活用戦略を語った。
3層のデータ活用戦略で全社変革を推進
アフラックは1381万人の契約者を抱え、がん保険・医療保険で国内シェア1位を誇る。同社はデータ利活用を3つのレイヤーで展開している。
第1層 高度分析による専門的課題解決:AIデータアナリティクス部が、Amazon SageMakerとの連携により機械学習モデルを構築。30年以上蓄積されたデータを活用し、病気ごとの引受基準見直しや追加契約見込み顧客の予測を実現。「従来比3倍の効果を実現したケースもありました」(高橋氏)
第2層 セルフ型データ利活用の民主化:Teradata Access Navigatorを活用し、全社員が現場で自らデータ分析を実行できる環境を構築。営業部門が担当代理店のマーケット分析や売上比較をリアルタイムで実施可能としている。
第3層 データアンバサダーによる文化醸成:各部署から選出されたデータアンバサダーが6ヵ月間のハンズオン研修を受講。約400人の育成を完了し、社長賞に表彰される成果を創出している。
Teradata VantageCloudで圧倒的な処理速度を実現
同社はTeradata VantageCloud エンタープライズの導入により、従来のオンプレミス環境からクラウド化を推進。1994年から30年間のパートナーシップを基盤に、「圧倒的な処理速度」を実現している。高橋氏は「業務に根ざしたデータ活用の基盤として、高速レスポンスが不可欠です」と強調する。
AIとBIの融合で描く未来像

今後の展望として、高橋氏は「AIドリブン」への進化を掲げる。現在はデータドリブンとAI推進が分離していた状況から、両者の融合により新たなビジネス価値創出を目指す。
具体的には「Access NavigatorのAI化」を推進。現場社員がBIツールの専門知識なしに、チャット形式でデータ利活用できる環境を構想している。「誰でも簡単に、時間をかけずにデータ活用が可能になります」と説明する。
データサイエンティストに対しても、対話型データ利活用AIエージェントによる効率化を計画。「案件が殺到する中、手間をかけずにパターンやトレンドを自動抽出したい」と期待を込める。
アフラックの事例は、30年の信頼関係を基盤とした段階的なデータ活用高度化が、全社的なAIドリブン経営への転換を可能にすることを示している。専門部署による高度分析、現場の民主化、そして文化醸成の3層戦略が、生命保険業界の新たなスタンダードを創出している。
AIの民主化から真のビジネス価値創出へ
これらの事例が示すのは、汎用AIから専門AIエージェントへの転換だ。業界特有の知識と高速な処理能力を組み合わせることで、従来のPoCの枠を超えたビジネス価値を創出できる。
Teradataの戦略転換は、単なる技術提供者からビジネスパートナーへの進化を象徴している。「お客様のユースケースやニーズに寄り添い、業務特化でインダストリー別のソリューションを提供する」(小野氏)という姿勢が、真のAIドリブン経営の実現を後押しする。
AIの民主化が進む中、企業に求められるのは汎用AIの活用ではなく、自社の業務に特化した専門AIエージェントの構築だ。統合データ基盤を土台とし、業界知識を組み込んだAIエージェントが、次世代のビジネス変革を牽引する。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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