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量子AIなどに注目集まるも「ガバナンスなき実装は必ず失敗する」──SASの最高データ倫理責任者が提言

ガバナンス整備はテクノロジーではなく組織の変革。地に足つけたアプローチを

製造現場ではデータが労働者を守るカギに、もはやAI・データガバナンスは社会的な責任

Vice President of Data Ethics Practice, SAS Institute レジー・タウンゼンド(Reggie Townsend)氏
Vice President of Data Ethics Practice, SAS Institute
レジー・タウンゼンド(Reggie Townsend)氏

 次の話題は、「製造業におけるデジタルツインと合成データの活用」についてだ。合成データにはバイアスのリスクがあるとされており、適切に管理されなければ深刻な問題となる。タウンゼンド氏も、「合成データは負のバイアスを増幅する可能性がある」と警告する。合成データでは、元データに存在するバイアスが統計的に複製されるからだ。

 しかし、同時にこの課題は解決のカギとして活かせる可能性がある。正しく実装されれば、増幅によってバイアスを識別・軽減できるからだ。デジタルツインは、この軽減策の検証で重要な役割を果たすという。たとえば、製造現場で働く人たちの命を守るために活用できるかもしれない。

 現在の製造業における現場の状況について、タウンゼンド氏は「フォークリフトなどを扱う製造の現場には、一般的に社会的地位の低い方が多く、身体的なリスクにもさらされやすい」と指摘。こうした世界での、テクノロジーによる予防的な安全対策の社会的価値は計り知れない。デジタルツインとデータの活用によって、危害発生の可能性を予測できるようになれば、安全な労働環境と人々の長い就労を実現できる。

 タウンゼンド氏は、ある製造現場で監督者と行った対話の内容を明かした。メキシコ系移民の若い女性労働者が機械に腕を挟まれてしまい、一瞬で切断してしまったのだという。この事故は、その工場で働く者全員にトラウマをもたらした。「テクノロジーを使って危険な状況を予測できれば、このような悲劇は防げるはずだ」とタウンゼンド氏は語った。

 例として、ペーパータオルやナプキン、トイレットペーパーなどといった日用品を製造するジョージア・パシフィック社では、SASとの協業で、製造現場の危険をデジタルツインによって事前に特定する事故防止システムを構築している。「技術の進歩が労働者の安全を守る手段となるなど、AIガバナンスは単なる企業リスク管理を超えた社会的責任の領域に入っている」とタウンゼンド氏は語る。

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AI規制のグローバル標準は実現するか? 技術面では「エージェント間通信」がカギに

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森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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